ヤマノボリと伝統行事 - 内之浦の正月行事テコテンドン|鹿児島の民俗 -薩摩民俗HOME|
●調査
1998.1.2 大隅半島内之浦町岸良
1998.2.11 薩摩半島大浦町大木場
●初出
加世田市文化協会『文化かせだ6号』1998.3 に所収。
98年正月に内之浦へ行って来た。2日朝8時,岸良(内之浦町きしら)の氏神に集まった人々は,3時間の山登りに出かける。集落の代表として,山頂の神柴をムラに運ぶのだ。
かつて手入れの行き届いた山は,薪拾い,山菜採り,そして花見の場所として親しまれてきた。今は年に一度,この日にだけ登る。古老の記憶を頼りに道を拓き,休むことなく進む。子供たちには危険も多く,都会では考えられないような行事だ。沢を渡り,滑り落ちる斜面を歩く。山頂では,親たちに押し上げられながら,巨大な岩にはい上がる。そこは絶景の世界。子供たちはムラを見下ろし,目に焼き付ける・・・
今こうした行事は,集落の社会生活を結びつけることに,視点がおかれている。しかし子供達にもう少し本来の意義を,そのムラ独自の言い伝えを語り継いでいけば,より意味を持った行事となり,伝統として受け継がれていくような気がする。
ただ,変容を遂げた姿でも,行事が残ること自体,貴重になってきたということも事実なのだが・・・