民俗知識の民具概説
暮らしの中に伝えられてきた知恵のことを民俗知識と呼ぶ。形のないものでは,ことわざや言い伝え(俗信・禁忌),まじないなどがある。
1 教育の民俗知識
学制が始まるまでの教育は,各家庭でのしつけや,寺子屋における読み書き・そろばんの習得が中心であった。また,青年組織など社会組織での教育も大切な役割を果たしていた。なお,笠沙町内の小学校は次のとおり開校している。
○赤生木小学校…明治13年簡易小学校として笠石迫に開校。
○玉林小学校…明治11年小浦・片浦でそれぞれ開校。明治24年玉林小として統合。
○笠沙小学校…明治12年藩政時代の野間池所役詰所を用い笠砂小学校として創立。
2 暦の民俗知識
明治5年(1872)に太陽暦が用いられるまでは,月の満ち欠けを用いた太陰暦が使われていた。今の年中行事でも旧暦(太陰暦)によるものや,月遅れによるものも多く伝わっている。
3 計量の民俗知識
メートル法が使われるまで,日本では長さを尺,体積を升、質量を貫という単位で表していた。長さを計る定規には布を計るクジラジャク(鯨尺)や,大工が用いるカネジャク(曲尺)などがあった。枡は体積を量る計量具。笠沙ではゴともいう。またチキリは重さを量る天秤ばかりのこと。
個別民具解説
ショケンダイ(書見台)
本をおいて よむための台
書物を置いて読むための台。木製で,茶色に塗ってある。『笠沙町の民具』によれば,明治末ごろ使われもので,使用したのは先生のみで生徒は使わなかったという。
|
高さ58cm,
台の長さ28.5cm,同幅39cm |
|
ソロバン(そろばん)
玉をはじいて計算するどうぐ
玉をはじいて足し算,引き算,掛け算,割り算をする計算具。現在のソロバンは下の玉の数が4つが一般的だが,写真のものは下に5つの玉がある。枠と玉は木製で,串は竹製。15列。『笠沙町の民具』によれば,網元で一般的に使われていたものという。
|
長さ33cm,幅11cm,厚さ3cm
|
|
マス(枡)
米や,えき体などを計るどうぐ
枡は酒・醤油などの液体や,米・麦などの体積を計る計量容器。右下の大きなものが2合5勺(450dl)枡。鉄くぎで止めてある。左下は上げ底になっている(2合枡か)。竹くぎ止め。上は5勺枡(90dl)。商標と「液用五勺」という焼印がしてある。3点の中では,2合5勺の大きな枡が色やくぎの使い方からもっとも新しいように思われる。他の二つは黒ずんでいる。
|
@方11cm,高さ6cm,
A方9.2cm,高さ6cm,
B方6.5cm,高さ4.6cm |
|
マス(枡)
しょうゆや おさけの分りょうを計るどうぐ
穀物や液体の分量を計る道具。右の大きなものは,「一升」という焼印がある。1升は1.8リットル。鉄くぎで止めてある。中の枡は容量不明。5合程度か。焼印があるが判読できない。鉄くぎ止め。左のものは商標と「一合」の焼印がある。底はちびて痛んでいる。いずれも木製で,横の木は角ごとにかみ合わせて,それをくぎで止めている。
|
@方17.5cm,高さ9.5cm
A方14.5cm,高さ7.5cm
B方8.5cm,高さ5.5cm |
|
マス(枡)
えき体の体せきを計る きぐ
醤油,酒などの液体を計る計量器具。焼印で「液用一合」とある。木製で,角をかみ合わせている。裏は竹くぎ止め(8箇所)。
|
方8.5cm,高さ5.5cm |
|
マス(柄付き枡)
しょうゆや おさけを計るどうぐ
枡は醤油や酒などを計る計量具で,これはそれに柄を付けたもの。焼印で「液用二デシワットル」とある。「液用」の文字は現在と同じように左から右になっている。デシリットルではなくデシワットルと見える。いずれにしても戦後のものであろう。木製で角をかみ合わせている。裏は竹串8本で止めてある。
|
高さ25cm,幅8.5cm,幅8.5cm |
|
クジラジャク(物差し・鯨尺)
きものの,ぬのなどを計るものさし
裁縫用に布を計る物差し。元は鯨の骨で作ったので,鯨尺と呼ばれている。明治以降に民間に広がった。写真のクジラジャクは5尺の長さで,1尺ごとに切込みを入れてある。両端からちょうど中央にも目印の節目を入れてある。さらに一方の端には,1尺を10の節目で分け,1寸ごとの目印をつけてある。裏に屋号と思われる墨書がある。1尺は約30.3cm,1寸は約3.03cm。
長さ151.5cm
|