5月 鯉のぼりと蜘蛛の俗信 朝と夜の蜘蛛,どちらが縁起がいい?鯉のぼりを立てないムラ?| 加世田風物詩 < 南さつま半島文化

皐月の盗人グモ

―薩摩半島加世田市の五月節句と蜘蛛の俗信―

写真●玉虫野の茶畑 我が上鴻巣(かみぐるす)(加世田校区)のアパートに今年も大グモがやって来ました。
 加世田(かせだ)ではヌスィトコッなどと呼ばれる脚高蜘蛛です。家の主なのか、盗人なのかおもしろい名前がついたものです。

 玉虫野(たまむしの)では「朝クモが降りてきたとき、上は山だ下は川だといって、クモの下に手を当てて上にのぼらせ、上らなかったら良くない」と言われます。「朝クモ夜ムカデ」あなたのところではどういわれていますか。加世田の中でも縁起が良いと伝えられる地区と、不幸の知らせというところがあるようです。ちなみに我が家のクモ君は、たいてい夜に見かけるのですが……。
 旧5月5日の端午の節句、加治木町(かじきちょう)でクモ合戦が行われます。今は6月の第1日曜日になっていますが、ヤマコッ(山グモ)と呼ばれるしましまの女郎蜘蛛を棒の上で競わせます。四国の高知県でも同じような行事があり、こちらも街を揚げての伝統行事となつています(中村市一条神社)。

 さて、この節句を前に、各地で鯉のぼりが風に吹かれ出しました。最近は、たくさんの鯉のぼりが川に漬されているのをよく見かけますが、これだけ揃うと優雅なものです。
 今年、市内でもNTT加世田営業所の鉄塔や奇麗になった下木屋の花渡川にかけられていました。ところが加世田の麓(ふもと)では、「日新公(島津忠良)の馬が鯉のぼりに驚いた」ので、昔は立てなかったそうです。

 八十八夜(立春から数えて88日)を迎え、鉄山・東山・玉虫野など加世田のお茶どころは一番茶の茶摘みで大忙しです。新緑の美しい季節、鯉のぼりを眺めながら、皐月の盗人グモと仲良く過ごす今日この頃です。

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