日新公いろは歌 - 戦国武将島津忠良(日新公 -じっしんこう-)が著した郷中教育の基本書|加世田歴史館 - 薩摩民俗HOME|
日新公いろは歌
■いろはにほへと ■ちりぬるを ■わかよたれそ ■つねならむ
■うゐのおくやま ■けふこえて ■あさきゆめみし ■ゑひもせす
島津忠良は,明応元年(1492)に薩摩半島伊作で生まれ,1527年に出家して日新斎と名乗りました。1540年加世田に移り住み,のちに薩摩藩郷中教育の基本書となる「いろは歌」や戦国時代の武士たちを弔うための六地蔵塔などを残し,永禄11(1568)に77歳で没しました。以下では,いろは歌全文を紹介します。「日新公いろは歌」はさまざまなテキストがありますが,このページは『加世田市史 下巻』の記述によります。縦書きが読みにくい場合は横組みでご覧ください。
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【島津忠良 しまずただよし】 1492―1568(明応1―永禄11)
●戦国時代の武将。島津氏支族で,薩摩伊作領主の伊作喜久の子。父の死後母が相州家島津運久に再嫁したため,忠良は伊作・相州両家領を合わせ領し,子貴久に守護家を継がせ,ともに薩摩・大隅・日向3国を支配した。〔高柳・竹内編『角川日本史辞典第2版』から引用〕
●加世田に隠居した忠良は・・・1546(天文15)年,急速に増大化していた家臣団の指導と教育に関心を寄せており,家臣団としての規律を理解しやすいように,覚えやすいようにと,いろは順に歌にしていた。〔三木
靖「島津忠良(日新公)」(『島津日新公いろは歌』,高城書房,2000,に所収)より引用〕
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と |
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へ |
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ほ |
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に |
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は |
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ろ |
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い |
いかす刀もただ一つなり |
科ありて人を斬るとも軽くすな |
つもらばちりも山とことの葉 |
下手ぞとて我とゆるすな稽古だに |
心に恥ぢよ天地よく知る |
ほとけ神他にましまさず人よりも |
われにます人おとなしき人 |
似たるこそ友としよけれ交らば |
今日も今日もと学びをばせで |
はかなくも明日の命をたのむかな |
心にこそはたかきいやしき |
楼の上もはにふの小屋も住む人の |
わが行ひにせずばかひなし |
いにしへの道を聞きても唱へても |
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を |
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る |
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ぬ |
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り |
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ち |
つとむる道をうしと見るらん |
小車のわが悪業にひかれてや |
はじめて聞ける顔もちぞよき |
流通すと貴人や君が物語り |
耳目の門に戸ざしよくせよ |
ぬす人はよそより入ると思ふかや |
心の駒の行くにまかすな |
理も法も立たぬ世ぞとてひきやすき |
人はおもんじはづるものなり |
知恵能は身につきぬれど荷にならず |
▲
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そ |
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れ |
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た |
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よ |
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か |
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わ |
主人のためになるものと知れ |
そしるにもふたつあるべし大方は |
さぐるは人をさぐるものかは |
礼するは人にするかは人をまた |
道より外に名も流れまじ |
種となる心の水にまかせずば |
友はかがみとなるものぞかし |
善きあしき人の上にて身を磨け |
なみのよるこそなお静かなれ |
学文はあしたの潮のひるまにも |
うらみも起り述懐もあり |
私を捨てて君にし向はねば |
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む |
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ら |
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な |
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ね |
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つ |
天のせめにしあはざるはなし |
昔より道ならずしておごる身の |
世に残る名をただ思ふべし |
楽も苦も時すぎぬれば跡もなし |
心も心何かおとらん |
名を今に残しおきける人も人 |
世にまことある伊勢の神垣 |
ねがはずば隔てもあらじいつはりの |
報ひ報ひてはてしなき世ぞ |
つらしとて恨みかへすな我れ人に |
▲
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ま |
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や |
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く |
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お |
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の |
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ゐ |
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う |
身ばし頼むな思案堪忍 |
万能も一心とあり事ふるに |
鳥にふたつのつばさとを知れ |
やはらぐと怒るをいはば弓と筆 |
末は鞍馬のさかさまの世ぞ |
苦しくとすぐ道を行け九曲折の |
欲をはなれて義を守れひと |
思ほへず違ふものなり身の上の |
時に到りて涼しかるべし |
のがるまじ所をかねて思ひきれ |
身をいたづらにあらせじがため |
亥にふして寅には起くとゆふ露の |
おもへばいまぞ後の世ならん |
憂かりける今の身こそは先の世と |
▲
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て |
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え |
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こ |
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ふ |
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け |
おもひかへして身をもたしなめ |
敵となる人こそはわが師匠ぞと |
看経はよししてもせずとも |
回向には我と人とを隔つなよ |
そろゆれば生き揃はねば死す |
心こそ軍する身の命なれ |
多勢を見ても恐るべからず |
無勢とて敵をあなどることなかれ |
必ずならば殊勝なるべし |
賢不肖もちひ捨つると言ふ人も |
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し |
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み |
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め |
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ゆ |
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き |
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さ |
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あ |
人は心のなからましやは |
舌だにも歯のこはきをば知るものを |
かならず天のたすけあるべし |
道にただ身をば捨てむと思ひとれ |
先祖のまつり忠孝の道 |
めぐりては我が身にこそは事へけれ |
心一つの手をばはなれず |
弓を得て失ふことも大将の |
皆まよひなりみな悟りなり |
聞くことも又見ることも心がら |
ただ情あれ君がことの葉 |
酒も水流れも酒となるぞかし |
迷はばいかに後のやみぢは |
あきらけき目も呉竹のこの世より |
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す |
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せ |
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も |
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ひ |
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ゑ |
月もほどなき十六夜のそら |
少しきを足れりとも知れ満ちぬれば |
義不義は生れつかぬものなり |
善に移り過れるをば改めよ |
人に先づよく教へ習はせ |
もろもろの国や所の政道は |
民にはゆるすこころあるべし |
ひとり身をあはれと思へ物ごとに |
無明の酒をかさぬるは憂し |
酔へる世をさましもやらでさかづきに |
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