つな引きのお祭り<かごしま編> | さつま半島こども博物館 |
皆さんのところには、綱引きのお祭りがありますか?
鹿児島では昔から、八月十五夜に綱引きのお祭りがあります。十五夜はお月見だけではないんですよ。鹿児島には、十五夜のお祭りで、ワラやカヤで作った手作りの大綱を引きあい、その綱を土俵にして、子供たちが相撲を取る――という地域がたくさんあります。
そんな綱引きのお祭り(伝統行事)を、ここでは見ていきましょう。
綱引きの大綱は、ワラやカヤをない合わせて、太い綱にしていきます。こうして綱を作ることを「ツナネリ(綱練り)」と言います。できた綱は、子供対青年や、集落の中での地区対抗戦で、綱引きをします。綱引きが終わると、綱を使って土俵を作り、相撲を取ります。綱引きの前に十五夜踊りをするところや、後に「お月様の輪」という行事をするところもあります。昔は、すべての行事が終わると、綱を川や海に流すところもありました。
さつま半島には、綱引き合戦をせずに、綱を引きずって集落の中を回るだけの「綱引きずり」があります。また、綱をはさんで向かい合って引く「ヨコビキ綱引き」という、めずらしい綱引きもあります。
十五夜の綱の材料となるカヤ(茅)を、山から取ってくるときにも、いろいろな行事があります。火を灯して、山からカヤを下ろすことを知らせる「火とぼし」、カヤを頭からすっぽり被って下りてくる「カヤ被り」などです。
また、「カヤ被り」と同じような格好をして、相撲の四股(しこ)をふみながら踊る「ソラヨイ」という行事もあります。
綱引きのお祭りの一つ、鹿児島の十五夜綱引きはいかがでしたか? 綱引きといっても、いろんなやり方や作り方があることが分かりましたね。
鹿児島の十五夜綱引は、つぎのように仕組みになっています。この基本的なかたちから、いろいろな形の十五夜行事が生まれたことがわかります。
@材料集め → A綱作り → B綱引き → C綱の再利用(相撲)と綱流し
さて、どうして十五夜に綱引きのお祭りが生まれたのでしょうか。
十五夜は、お米がたくさん取れますように、お芋がよくできますように、という豊作祈願の願いが込められています。そして、私たちが健康で長生きできますように、という健康祈願の願いもあります。お月さまと大地に感謝し、こうした願いを祈るのが十五夜行事の綱引きです。
十五夜の綱は、竜や蛇を表現しているとも考えられます。蛇は脱皮して生まれ変わります。また月も、満月と新月を繰り返します。ですから、蛇も月も、いわゆる「死と再生」を繰り返しているわけです。そのことが、不老不死、ひいては健康祈願の願いにつながっています。
また、月が出ると、夜露がおります。露は、水をイメージさせ、水は農作物にとって大切なものです。このことから、豊作祈願の願いにつながっています。
したがって、「健康祈願」と「豊作祈願」を祈るために、十五夜のお祭り(伝統行事)で、綱引きが行われるわけです。
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