2月伊勢講 加世田市上津貫と内山田上の伊勢講を比較し,伊勢講の変容を考える。 |加世田風物詩 < 南さつま半島文化|
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お伊勢様は荒っぽいこと,賑やかなことが好きな神様で,おめでたいことのある家にトンデイクといわれます。
上津貫(久木野校区かみつぬき地区)では1月11日に,1つ向こうの集落にオイセドンが飛んで行きます。今年(1996年)は,1年間お祀りした福元公民館で集落の人々によるお祝いがあり,それから新しい宿となる浦口公民館まで65年ぶりに作り直された祠で移されました。
浦口公民館の門口ではイヌマキの枝をなびかせて人々が招き入れます。縁側から嫁入りさながらに公民館に上がり再びお祝い。お祭の煮しめやゆで卵は,各家からどんぶり1杯ずつ持ち寄った素朴なごちそうです。
以前は預かる集落の人みんなでくじを引いて宿を決めました。1年間お祀りするのは苦労も多く「うれしいけれども,ヤッセンかった(やるせなかった)」そうです。
また,道中の歌は,テープで流されるようになりました。来年(1997)は新山(しんやま集落)に飛んで行きます。
同じ日,内山田上(内山田校区うちやまだかみ地区)でもお伊勢講があります。係りの人が前の宿で供えられた焼酎を1年ぶりにあけてお祀りし,それから宿移り。人々の「おらべよー(叫べよー)」の声に「ほーい,ほーい!」と応えるユーモラスな宿移りが繰り広げられます。
上津貫では料理から集落民が参加するかたちになっていますが,内山田上では係りの人が中心になって公民館でのお祭があり,人々は道中でお参りしているのです。
今月も各地でお伊勢講が祀られます。上津貫では「年に一度の地区の年寄の楽しみ」だと言われます。家に飛んでくることはなくなりましたが,参加しているみんなに神様の力が及んでいるという意味は変わりません。五穀豊穣や健康祈願とともに地域円満の願いも込められているのではないでしょうか。