碁石茶の歴史と民俗 - 四国山中に伝わる幻の発酵茶の技術史と民具の変容 |鹿児島の民俗 - 薩摩民俗HOME|
「碁石茶の歴史と民俗」は,日本民俗学会会員の私が,調査・研究した学術レポートを紹介するサイトです。鹿児島から発信しています。碁石茶は1990年,高知大学の学生時代に調べはじめたものです。ここでは健康食品としてではなく,伝統的な作り方・使い方を紹介しています。販売についてのお問い合わせもありますが,私は一研究者ですので斡旋は行いません。ではごゆっくりご覧ください。(サイト制作:日本民俗学会会員 井上賢一)
cf.
〔拙文 2009年〕:「碁石茶の作り方・使い方 - 四国山中大豊町の茶加工民具 -」 『鹿児島民具』21号所収 鹿児島民具学会 56-62頁。
〔拙文 2011年〕:「碁石茶の製茶法と利用法」 『土佐民俗』93号所収 土佐民俗学会 25-34頁。
〔拙文 2015年〕:「碁石茶製造民具の変容」 『民具研究』152号所収(第39回日本民具学会高知大会:研究発表) 日本民具学会 73-76頁。
1.碁石茶博物館・2.碁石茶づくり・3.碁石茶のムラ・4.茶粥づくり・5.茶粥の島
1.はじめに - 碁石茶とは -
2.碁石茶の作り方1 - 碁石茶製造の新旧工程表 -
3.碁石茶の作り方2 - 碁石茶製造民具の変容表 -
4.碁石茶の使い方 - 流通・販売/特色・用途 -
5.まとめ - 民具の変容/作るむらと使うむら -
1.はじめに
2.山村の生業変容と碁石茶
3.四国の植物加工技術
4.碁石茶再考
- 第39回日本民具学会大会(高知大会)研究発表
製茶は加熱→揉捻→乾燥という工程で作られます。茶の葉が自然に発酵していくのをどのように加熱して止めるかという違いで,次のように分類されます。碁石茶は自然発酵は蒸して止める一方で,人為的に強制発酵させたものです。
分類 | 自然発酵 の止め方 |
強制発酵 の進め方 |
代表的な製茶 |
---|---|---|---|
発酵茶 | なし | なし | 紅茶 |
半発酵茶 | 途中で炒る | なし | ウーロン茶 |
後発酵茶 | 蒸す | 寝かす 漬ける | 碁石茶・プアール茶 |
不発酵茶 (緑茶) |
蒸す | なし | 煎茶・深蒸し茶・玉露・手もみ茶・抹茶・番茶 |
炒る | なし | 釜炒り茶 | |
蒸して炒る | なし | ほうじ茶 |
高知県大豊町に伝わる碁石茶は,中国のプアール茶と同じように発酵させて,団茶のように固めたお茶です。日本にはこうした伝統的な発酵茶は阿波番茶・石鎚黒茶・富山ばたばた茶などがあります。ウーロン茶はお茶の葉を自然に発酵させるのですが,碁石茶は漬物のようにして強制的に発酵させます。
碁石茶の製法は@茶摘み→A蒸す→B寝かす→C漬け込む→D断つ→E乾す→F俵詰めという工程で作られます。むしろの中で好気性カビによって発酵させる(寝かす)作業と,漬け桶の中で嫌気性バクテリアによって発酵させる漬けこみ作業がポイントとなっています。つまり,強制発酵を2種類もするわけです。
ですから,直接飲むとウーロン茶の何倍も渋い味です。この碁石茶,生産地では普段飲むことはありません。瀬戸内の島々の船乗りさんたちに,茶粥のだしとして長年親しまれてきたものです。
ちなみに碁石茶の名前は,製造工程の6番目の「乾す」という過程で,庭に広げた筵の上にこの固まったお茶を並べていくと,ちょうど碁盤に黒い碁石を並べたように見えるところから名づけられたとされています。白碁石の部分はありませんが・・・。
大豊町碁石茶協同組合(生産者組合の公式ネットショップ)
高知県大豊町役場
高知新聞「酸味ある独特の風味・碁石茶(大豊町)」(2002/4/6朝刊-高知アラカルト。リンク切れ)
四国の「道の駅」(国土交通省四国地方整備局。道の駅大杉の紹介。)
高知市役所「茶の伝来と碁石茶」(高知市歴史散歩 - 市広報2003年7月号)
四国新聞「茶粥(志々島など)」(特集21世紀へ残したい香川)