金峰町の棒踊り - 田布施・大田・阿多・棒踊りの構造・棒踊りの成立・まとめ|鹿児島の民俗 - 薩摩民俗HOME|
大田校区では、中津野に棒踊り系芸能が伝承されている。その 他、郷土史によれば、浦之名
中津野の棒踊りは、毎年4月最終日曜日に、金峰町中津野の南方神社へ奉納される。踊りは4種類が伝承されている。保存会役員によれば、かつては普通作の田植え上がりの踊りとして、
練習はかつては茶摘みの時期と重なり、集まるのも大変で、茶摘み作業の合間をぬって、先輩の厳しい指導のもと行っていたという。
午前11時に踊り子が道行きの歌に合わせて境内に到着。朱色の襷をほどいて、それぞれの採り物(棒・鎌・ナギナタ・刀・ジャリン)とともに拝殿にお供え。神官によるお祓いを受ける。神事の間に、集落の人々が境内で昼食。
祭典、昼食が終わると正午から境内の、下の段と上の段で、それぞれ「金山踊り」「鎌踊り(2種類)」「棒踊り」の順に踊る。踊りが終わると、道行の歌に合わせ集落に繰り出し、集落内12か所で披露して回った。以下、各踊りについて報告する。
ホコ 削りかけやシベ飾りはついていないが、踊り子の先頭に付き、「ホコ」と呼ぶ。280センチのマダケ製で、上部に文字を書いた杉板を付けている。表「奉納 御田植踊」裏面「中津野集落」。シベ竿状のものは、もともと無かったという。
4人がらみシベ錫杖踊り(金山踊り) 「金山踊り」と呼ばれる。二才衆(青年)の踊り。この年は小学生の踊り子16人。2列縦隊で4人1組で踊る。棒踊りの棒突きの要領で歌に合わせジャリンを振り、その後金山踊りを踊る。
採り物は、右手にジャリン、左手にカンナ(刀)を持つ。ジャリンは短い錫杖に色紙のシベ飾りを付けたもので、振るとチャリンチャリンと鳴る。長さ36センチ。カンナは杉板に金の色紙を巻き付けた模造刀。長さ95センチ。服装は全員同じで、白絣の着物に紺の短パン、朱色柄の手甲、黒脚絆、白足袋、ワラジ、白鉢巻き姿。朱色の襷がけ。
4人がらみ鎌踊り 中津野では「2人組カマオドリ」と呼ばれる二才組の踊り。元は中津野西地区の踊り子が踊った(現在は中津野全区)。大野と異なり、①の金山踊りとは別の踊り子が、踊る。鎌と長刀の踊り。2列縦隊で、4人1組になって踊る。この年の踊り子は4人×2組=8人であった。
採り物は右列が鎌、左手にナギナタを、右手に持つ。左手には採り物はない。鎌は長さ47センチ。ナギナタは長さ110センチ。服装は全員同じで、白絣の着物に紺の短パン、朱色柄の手甲、黒脚絆、白足袋、ワラジ、白鉢巻き姿。朱色の襷がけ。
6人がらみ薙刀踊り 中津野では「3人組カマオドリ」と呼ばれる壮年層の踊り。元は中津野東地区の踊り子が踊った(現在は中津野全区)。尾下下組の三才踊りと同じで鎌とナギナタの踊り。3列縦隊で、6人1組。今年の踊り子は6人×2組=12人であった。
採り物は、左右列は右手にナギナタ、中央列は右手に鎌をもつ。全員左手には採り物を持たない。長さはナギナタ110センチ、鎌47センチ。服装は、紺絣(現在は白絣も入る)の着物に白の短パン、黒脚絆、白足袋、ワラジ、白鉢巻。朱色の襷がけ姿。
6人がらみ棒踊り 中津野では単に「棒踊り」と呼ばれる壮年層の踊り。3列縦隊で、6人1組(6人がらみ)。この年は6人×2組=12人(踊り子には4人がらみ鎌踊りとの掛け持ちあり)。
採り物は全員、カタギで作った六尺棒を右手に1本持つ(左手は採り物なし)。歌に合わせて勇壮に掛け合わせる。棒は長さ134センチ。服装は、白衣又は白絣に、朱色柄の手甲、黒脚絆、白足袋、ワラジ、朱色の襷がけ、白鉢巻姿。
歌詞 この年に神社の奉納された4人がらみ鎌踊りと、6人がらみ棒踊りでは、棒突き・踊りとも次の同じ歌詞で踊られていた。
○「清めの雨は、パラリと振り通る」
6人がらみ薙刀踊りでは、次の歌詞で棒突きし、踊りがある。
○「とっしゃごの花は、揉めば手に染む」
その他、保存会の皆さんによれば、次の歌詞がある。
○「おせろが山に、前は大川」
○「山太郎蟹は、川の瀬に棲む」
○「今こそ通る、神にモノメイ(物詣り)」
金山踊りでは、ジャリン振り(ジャリンを上下させて鳴らす)で、「清めの雨は、パラリと振り通る」、シベ錫杖踊り(金山踊り)は大野と同じ歌詞で2番(今度大坂…)が聞かれた。
[花瀬・松田の棒踊り]→