1月 カセダウチ・ハラメウチ(小正月の訪問者)| 加世田風物詩 < 南さつま半島文化|
東京のテレビ局から市役所へこんな電話があったそうです。「そちらにカセダウチという,仮装をして家々を回る面白い正月行事があるそうですが・・・」。カセダウチは七福神などに扮した人々が,新築のうちをお祝いしてやってくる小正月の行事。県下の内陸部にあって加世田では行われず,地名とも関係ないようです。
昨年(1996),知覧町中郡(薩摩半島ちらんちょう・なかごおり)の新築の家を1組目に訪れた神様は,金髪の覆面美女を2人従えたエビス様でした。家の人はオタマジャクシの吸い物に松ボックリ,それに鶏のトサカと,珍品料理でもてなします。めでたい財産目録と大黒様の像を贈り,神様は人間に戻って改めて祝福。ここまではどんな「歓迎」を受けても,神様だから普通の言葉をしゃべってはいけないというしきたりです。
さて,同じ小正月,加世田では子供たちが新婚さんを祝福して回るハラメウチという行事がかつてありました。益山の上集落(ますやま校区かみ集落)では大正ごろまで,子供がこの日,地面の穴に棒を入れてハラメハラメと唱え,最後にその家の人からごちそうをもらって帰りました。この行事はヨメジョモチ(お嫁さん餅)とも呼ばれ,万世・益山・長屋校区(ばんせい・ますやま・ながや)のところどころで行われていたようです。
また,やはり新婚さんを冷やかす行事としてトベラ木(臭い木)を削って食べ物に入れたという津貫堂原(つぬき校区どうはら集落)のハヤマ講(早馬講)や,塩茶を飲ませたという話もありました。
正月の15日前後に仮装した青年や子供たちが家々を回って祝福に訪れるこうした行事は「小正月の訪問者」と呼ばれるものです。鬼の様相をした神様が子供をさとす秋田のナマハゲや,神様に変装して子供が餅をもらって回る中国地方のホトホトや四国のカユツリ行事,「祝い申そう」と頬被りの青年が回ってくる種子島のコノミヤジョウなども,同じように新年の祝福のために家々を訪れる神々のようです。
福の神と鬼。どちらが元の姿か分かりませんが,カセダウチは福の神として華やかさを増してきています。
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