下野敏見
桜島は大正3年の大爆発まで、大隅から切り離されている孤島であった。そのせいか、今なお古い民俗相を留める。
ウッガンは、本宅の表座に祭ってあって、霧島神宮や国分八幡宮などを勧請した家の守護神で、外神を家の内に招き入れてあるので、ウッガン(内神)という。氏神とは解せられていない。
ウッガンの日常の管理は主婦がするが、ウッガンマツイは巫女のマイネ(呪い)が行う。ウッガンの形態として、桶の中に御幣を入れたものや舟型の中に御幣を人形型に切って立てたものも見られる。船形は海運に関係の深い家である。
桜島のシャーマンは巫病をへて成巫するタイプで、女性が多い。噴火や地鳴りなどがあって、降灰でビワやミカンなどの特産物もやられる自然の中で、不安があるせいか、シャーマンは多い。
桜島に21社の神社がある。これらの中で、降魔の神で北岳を鎮める御岳蔵王権現(祭神海幸彦)と南岳の噴火を海底から鎮める御岳竜王権現(祭神月読命)と、横山に祭る月読神社(海幸彦も合祀)を注目せねばならない。海幸彦は隼人の祖神で、隼人町の国分八幡宮の山幸彦(天皇家の祖神)の兄神で、負け神である。国分から見ると、夕日の中に煙を吐く桜島は、隼人の霊を祭るアオシマ(死霊の島、青島、大島)である。
桜島の語源説。①古代の大隅守桜島忠信の名から、②木花之開耶姫から、③サ(狭)クラ(刳)説、④元禄11年島津綱貴が将軍にミカンを献上し、桜島蜜柑とした、⑤沖縄であふしま(奥武島)→青島、大島→桜島説。近代になって桜洲、桜峰小学校もできた。さてどれが正しいか。
2003年9月例会(桜島地域研究会) - 2003.9.6 鹿児島市東桜島公民館