牧洋一郎
西之表市の西方海上に浮かぶ種子島の属島馬毛島は、古くから「トビウオの島」で水産資源の宝庫である。1763年、種子島氏が塰泊浦など本島の浦人に対し漁業を許可し、その後明治になって、能野などの塩屋集落も漁場利用に参加したことによる。なお、昭和40年代中頃まで、各浦毎に漁業基地(季節小屋)を浦人らが利用していた。
島の約98.5%を採石業者馬毛島開発が所有し、採石工事のため職員が僅かに居住。また、「使用済み核燃料中間貯蔵施設建設候補地か、産業廃棄物処理場建設候補地か」と採石の跡地利用を巡り、疑惑の島となっている。そして、馬毛島の表玄関葉山港一帯の塰泊浦の浦持地約6千坪を巡って入会紛争が生じている。つまり、平成13年5月、採石工事反対派約20名の意思を無視し地盤の約64%が登記名義人から業者へ譲渡され(権利者約40名の同意を取付)、現在「入会権の確認」を求めて係争中である(原告=住民26名、被告=住民36名、業者)。原告の主張は、「入会権の確認、自然環境の保全、漁場の確保」であり、被告業者の主張は、「当該地は民法上の共有地であり各権利者の意思のみで譲渡が可能。採石工事が与える漁場被害は因果関係か明らかでない」ということである。その他、採石工事差止訴訟(自然の権利訴訟も含む)も係争中。
将来は原点に戻り、漁業を基本に据えた振興が必要とされよう。更に、季節小屋群復元(下野氏教示)、考古学による発掘調査(橋口氏教示)、自然の生態系を活かした子供の学習地(立澤史郎氏教示)等を模索する必要があろう。
2003年11月例会 - 2003.11.1 かごしま県民交流センター