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例会研究発表要旨

2007年度鹿児島民具学会例会

■竹独楽の変遷の一考察

高重義好

 鹿児島で言う鳴独楽、引独楽の竹独楽系のルーツは定かでないが、柳田國男は『ツグリといふ独楽』(定本 柳田國男集 第十八巻)の中で、倭名鈔にいう「孔あるもの」は「古末都玖利をいふ」として、「平安朝の初までに、孔のある一種のこまが独楽といふ文字をつれてはいってきた」としている。この孔のある一種のこまが鳴独楽であることは疑いの余地はないが、倭名鈔では「孔あるもの」とあるだけで、その材質や形状には全く触れていない。同じ倭名鈔に「輪鼓」(和名 巻四 八[裏])の記事がある。

輪鼓 本朝相撲記云 輪鼓二人 謂雑芸之中弄輪鼓之者二人也 (後略)。

とある。

 これを見ると輪鼓は雑芸の一つで、散楽として奈良時代に唐から伝来、朝廷の規制を受け朝廷行事の相撲節会等に奉仕した。

 輪鼓の起源は中国とみられ、今でも「空鐘」といわれ巷間の子供相手の店で売られている竹製の細腰鼓型の竹独楽である。柳田國男の言う「孔のある一種のこま」は、この空鐘=輪鼓と推定できる。

 中国の竹独楽は①空鐘型か、②班空鐘型(①型を中央で左右に二分割した片方)、それを起立させた形の③鳴声陀楽型(鹿児島の鳴独楽タイプ)がある。この三者の時間的前後関係は明らかにされていないようであるが、列島内の鳴独楽の分布からみれば日本国内は①から③へ推移したように見えるが、今後の検討課題であろう。

2007年9月例会 - 2007.9.1 鹿児島市中央公民館

高重義好「竹独楽の変遷の一考察」

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