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例会研究発表要旨

2008年度鹿児島民具学会例会

■姶良町、下名の民俗

小川秀直

 姶良郡姶良町下名は、別府川の上流、山田川周辺の地域で、田んぼが広がる農村地帯で田の神講も盛んである。
 山田川沿いの県道を東側に入ると大山という集落がある。以前は80戸程の集落であったが、昭和54年には73戸、昭和60年には67戸と過疎化が進んでいる。
 大山集落は濵石門、西門、中ン門の3つの門(かど)で構成されていた。現在は大山西自治会と大山東自治会に分かれ、西自治会は濵石門にあたり、東自治会は西門と中ン門で構成されている。

 大山集落全体の田の神は公民館横に天明元年の石像があるが、各班ごとにも回り田の神があって田の神講が行われている。
 大山東の中ン郷班には、寛永4年の高さ80センチほどの持ち回り田の神がある。化粧された田の神を青年達が担いで、次の座元に送る。餅をついたあと、集落全体の田の神の前で餅を撒き、それを子供達が拾うものだった。
 下名、田の田の神講では、座元が丸餅とナンコ餅、ウシノシタ(牛の舌)といって20センチほどの楕円形の餅を2個つく。丸餅とアンコ餅はみんなで分けるがウシノシタは座元と次の座元で分ける。
 集落ごとの田の神講は、それぞれ違いもあり興味深い。しかし過疎と高齢化で、田の神石像を持ち回るのが困難となり、途絶えた所も出てきた。民俗の危機の時代に入ったようだ。

2008年5月例会 - 2008.5.10鹿児島市中央公民館

小川秀直「姶良町、下名の民俗」

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