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例会研究発表要旨

2021年度鹿児島民具学会例会

■ト骨と亀卜

橋口尚武

 縄文時代には自然現象に対する信仰が中心であったろう。弥生時代には人為的な信仰生まれ、その第一がト骨である。ト骨は原則として鹿の肩甲骨を用い、割れ目を出すために必ず「町」を刻む。現在では新しい年代測定方法によって『魏志倭人伝』の記事と実際の年代が合致するようになり、そのなかに、

 「…骨を灼きてトとし、以て吉凶を告ぐ…」

とあり、弥生中期からの検出が多くなる。

 古墳時代後期に中国から亀トの風習が伝わり、全国統一とともに中央政権が採用し、奈良・平安時代を中心に朝廷で本格化する。納める亀の甲羅も土佐・阿波など税で1年で50枚ほど納入させる制度となる。

 占部は対馬・壱岐・京・伊豆からの採用が、やがて伊豆のみとなる。占部平麿によって吉田神道が開始され、その後、朝廷では応仁の乱(15世紀中頃)後に途絶え、江戸時代の初めごろ復活して今日に至る。1年の諸祭祀後のお祓いに用いられる。式部職では死小笠原産(?)のアオウミガメの腹甲を用い、その責任者は吉田氏で、吉田神道との関連を推定させる。今は「町」はなく甲羅を薄く削るのを都内の鼈甲業者に依頼している。

2022年1月例会 - 2022.1.9 鹿児島県歴史・美術センター黎明館

橋口尚武「ト骨と亀卜

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