井上賢一
10月の川辺地域研究会で実見する勝目の太鼓踊りについて、これまで調べた内容を、大太鼓の桴(バチ)に注目して紹介したい。
勝目には、上山田・中山田・下山田(東・西)の四つの太鼓踊りが伝承されており、毎年10月19日に竹屋神社で奉納した後、各集落を巡回して披露される。外円に大太鼓、内円には女装した鉦・鼓が入る。大太鼓の桴はいずれも40cmほどの藁製。上山田と中山田にはワラフリと呼ばれる、ササラ状の藁を持った先導役が付く。
薩摩半島における太鼓踊りの桴には、90センチほどのしなりのある木の枝を用いた「①木の枝型」、40センチほど藁縄を用いた「②切り縄型」、15センチほどの藺草を用いた「③粽型」の三種類が、北から順に分布している。また分布領域を持たないものに、すりこ木型・手持ちすりこ木型・藁苞型がある。
〔映像解説〕①木の枝型…徳重大バラ太鼓踊り・尾下太鼓踊り、②切り縄型…平山太鼓踊り・上別府太鼓踊り、③粽型…小湊太鼓踊り・内山田太鼓踊り。
これらの太鼓踊りについて、大太鼓と鉦の相対的な響きを比較すると、木の枝型では太鼓が強く響き、粽型では太鼓はこする程度でほとんど聞こえず一方で鉦の音が厳かに響く。木の枝型の桴の地域は、太鼓の音で稲の害虫を払う虫送り、ひいては豊作祈願の意味が込められていると考えられる。一方鉦の音が響く粽型では先祖供養・念仏踊りの要素が強いといえるのではなかろうか。
切り縄型の桴を用いる勝目の太鼓踊りは、木の枝型の要素と、粽型の要素を兼ね備える、貴重な民俗芸能と言える。
2024年9月例会 - 2024.9.8 鹿児島県歴史・美術センター黎明館