北村廣隆
①はじめに 薩摩にのみ伝承の「天吹」はその構造面からも特殊な笛であり、類似の「一節切」や「尺八」の竹笛などとは一線を画す。笛に関連した時代背景などとの検証は今後も研究課題としたい。
②古い時代の「天吹」の発見 これまで発見された明治期以前の「天吹」は希少で、ほとんどの笛は比較的簡便な手作り様のものであったが、あらたに発見された「天吹」の作りは、かなりこれまでの笛とは異なっている。古代神官の着用品と見られる帷子(菊紋章入の織柄)と易に使う「筮竹」等と共に出てきた笛だが、上級神官(河内之守入道)? によって吹かれた笛と伝えられている。年代特定は文書記録されたものが少なく不明であるが、かなり古い時代(永和年間)あたりのものであろうかとも推察される。神楽笛=横笛「青葉の笛」? その他に二本の縦笛は外観が同様のものであったと北村家では伝えられていたが、そのうち一本の行方は現在不明となっている。
③体験的「天吹」論 新発見の笛は、その音色や、音域ともに古神道で貴ぶ音に近似。高度な技巧仕上げの漆塗り、その上部の節ほとんどに哺乳動物の骨(鯨骨?)を接合。特異なもので、特に音色は澄んだ高音域が奏でられ"神笛"として神事に耐え得る縦笛(経験上)である。
④過去の伝承者との吹奏比較、研究発表者『竹酔庵龍孫』生演奏。昭和十年代製作のレコードによる「現代尺八」演奏曲との比較。明治時代の蓄音機(竹針)での聴き比べ体験。
2004年3月例会 - 2004.3.6 かごしま県民交流センター