小川三郎
かつて里村(現薩摩川内市里町)には、八朔節句(旧8月1日)に、子供行事(14歳以下)があった。男子組は葛蔓で綱をつくり、カズラタテをして山からくだって遊び、女子組はバッコウセックといって母が作った料理をもち寄って海辺近くの涼しい場所でたのしいひとときを過ごした。綱引きもバッコウセックも今はみられないが、村民全体の行事として新暦8月15日にカズラタテだけが継続されいる。消え行く伝統、民俗、風習を正確に伝える古老も少なくなり、継承する人々の移動や環境の変化で伝承があやぶまれている。
何故八朔の日を選んで行ったのか、いつの頃から始められたのか不明である、が八朔の語源も含めて推論してみた。一方バッコウコウとも言っていた方言についても、その由来と沿革について取り上げてもみた。
数少ない甑島のカズラタテの文献資料の中から、小野重朗著による十五夜綱引き文化の論考を参考にした。又、里村郷土誌(上)、「甑島列島民俗文化財緊急報告」(昭和51年度)による、村田煕・小野重朗・下野敏見・向山勝貞・東勝美氏の報告も貴重な調査資料である。
八朔の節句についてはほとんど忘れられている。歴史はロマンを追う如く、民俗、民具のかかわりについても夢を広げてみたい。
2005年5月例会 - 2005.5.7 かごしま県民交流センター