徳留秋輝
枕崎市別府の真茅集落では、毎年1月5日に、仏教的色彩を帯びたガランドン祭りが行われる。
尻無川の上流・枦原の迫田の土手に、土地の人々が「ガランドン」と呼ぶ河童封じの神・石の四面像がある。さらに、迫田の最上手の取水口とされていた土手の岩に、開田の碑がある。この碑によると、享保15(1730)年に儀右衛門がこの迫田を開いていることが分かる。この迫田をナンマンサン田圃と呼んだ。俵積田の人々が耕作していたという。この像より西に少し離れた南側の一段高い土手に、突出する岩石(水難の碑)がある。この岩は南無阿弥陀仏さま岩と呼ばれ、藩政時代の隠れ念仏の場所であったという。田植え時には、この像の四面に握り飯を供え、水難にあわないように祈願した。
「ガランドン祭り」は、堂の前にある北山神社に、地域の人々が夕方集まって行う。神社の後ろにある五輪塔群に幣串を立ててから握り飯を供え、その場で握り飯を頂きながら、お神酒を五輪塔群に振り掛ける。その後近くの公民館に集まる。仏具・阿弥陀如来像・親鸞聖人や蓮如上人の御影を掲げ、西蓮寺の僧侶によるお経と説教の後、豆腐と烏賊の料理で宴が催される。真茅の80歳代の古老によると、この「ガランドン祭り」は水難の神様・河童を祀る祭りであると親から伝えられてきたという。
「ガランドン祭り」に供えられる握り飯と、河童封じの神に供えられる握り飯の形が同じで、共に水難の神様・河童を祀るものだと言い伝えられてきたことから、隠れ念仏講であったと思われる。
2005年7月例会 - 2005.7.2 かごしま県民交流センター