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例会研究発表要旨

2005年度鹿児島民具学会例会

■トカラ列島の農具(前編-粟、田芋、甘藷)

下野敏見

 トカラの農具は、作物の栽培と儀礼の中で系統的、総合的に把握しなければならない。また、トカラ内部の南北の変異も、ヤマト・琉球比較の中でとらえる必要がある。
 粟は、焼畑栽培で、ヤマキイと称する包丁型山刀で琉球竹林を伐りひらいて行われた。その収穫は、手の爪のほか竹箆(たけべら)や金爪を用いた。金爪にはブリキ爪と銅板爪があった。
 摘んだ粟は畑でコシゲ(腰籠)に入れ、それを●(したみ)に移して、背負って帰った。●の製作は女性の仕事であった。トカラの●背負いは、奄美のティルや南九州のテゴ負いの中間移行過程を表す。
 田芋の栽培は、稲の栽培と似ていて、田に植える。子芋又は根ひげの付いた葉茎を田に植える。田芋は、七島正月や霜月祭りの儀礼に用いられる。
 甘藷はハンスーヌ又はハンツーといい、琉球圏特有の箆で植えつける。その箆は、トカラ北部の口之島、中之島、悪石島のものは片手でにぎる柄は、親指以外の四本の指が通って押さえられるような構造の刳り抜き型であるが、宝島や小宝島の箆は片手でしっかりにぎって持つ丸柄である。奄美諸島や沖縄のものは股木に刃を打ちこんだ形である。八重山諸島ではトカラと同じような刳り抜き型を使っている。
 このような芋箆は日本でも口之島から与那国島までの南西諸島、それも琉球文化圏にしかないものであり、琉球箆といってよいものである。

●…竹かんむりに羅

2005年9月例会 - 2005.9.3 かごしま県民交流センター

松田誠「チャベロの製作工程」
下野敏見「トカラ列島の農具(前編-粟、田芋、甘藷)」

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