渡山恵子
臍の緒(へそのお)は、胎児と母親がつながっている部分であり、出産と同時に行われる臍の緒切断は、母親からの分離、すなわち、胎児から新生児への誕生を意味する誕生儀礼である。
臍の緒切断には、臍の緒を括る道具と切る道具が必要であるが、『日本産育習俗資料集成』によると、括る道具として麻・葦・苧・木綿糸・絹糸などが、切る道具として竹べら・すすきべら・貝殻・茶碗の欠片・鎌等、様々な物が用いられている。しかし、全国的には竹べらで切るのが一般的であった。
筆者の調査では、鹿児島県で竹が用いられた例として、金峰町白川及び三島村黒島でその実例を聞くことができた。金峰町白川では、昭和四十年代初め頃まで、孟宗竹の雌竹の枝を二つに裂いて竹包丁を作り、臍の緒を切っていた。三島村黒島では、庭先の竹で竹包丁を作り、臍の緒を切っていた。
2005年11月例会 - 2005.11.5 かごしま県民交流センター