徳留秋輝
薩摩の蒸留酒器は、中国雲南省一帯に起源を発したものが、琉球を経て15世紀後半あるいは16世紀前半に山川に伝来したものと考えられてきた。しかし、薩摩の焼酎蒸留に使われたツブロ式と呼ばれる古代蒸留器は、広い分布を持つカブト釜式とは異なり、旧薩摩藩以外では見つかっていない極めて地域性の高いものである。そのために、直接中国大陸か朝鮮半島を経由して薩摩に伝来した蒸留器と想定される。
カブト釜式蒸留器は中国製と呼ばれる分類に属し、凝縮した液が蒸留器の中央から取り出される構造になっているもので、東洋の蒸留酒製造に広く用いられている。一方、ツブロ式蒸留器は凝縮液が冷却器の周辺に集まって排出される点に特徴があり、アレキサンドリア型と呼ばれ、東アジアでは少数例に入る。
ツブロ(粒露)の名称の由来は、穀物を蒸留して蒸留酒(焼酎)にするという意味でつけられた思われる。直釜式で、モロミを煮沸するタイプで、粒露の粒は穀物を、露は蒸留酒(焼酎)を指す。
薩摩のツブロ式蒸留器は、倭寇の海上のネットワークがあった福建省から伝来したものと想定される。明治時代、沖縄の甑式蒸留器にはカブト釜式とツブロ式があった。前者はそれ以前から存在したものであるが、後者は薩摩から伝来し改良されたものと思われる。
2006年11月例会 - 2006.11.4 かごしま県民交流センター