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例会研究発表要旨

2006年度鹿児島民具学会例会

■記録からみる薩摩焼の陶石産地―南さつま市京之峯―

鮫島美千代

 鹿児島県南さつま市加世田津貫に所在する京之峯は,薩摩焼の釉薬の原料となる陶石を採掘して場所として,江戸時代に編纂させた地誌等において紹介されている。「陶石」は江戸時代に発見されて以来(発見者は朴貞用か),苗代・竪野等の薩摩焼諸窯において近年まで使用され続けていた。今回の発表では,江戸時代に書かれた加世田郷の地誌に記されている京之峯についての記録,陶石採掘現場に祭られていた花瓶2点(白薩摩獣面耳付花瓶と白薩摩徳利),京之峯の地権者たちによって明治時代から残されていた「模合山帳」等から推測できる京之峯の生産・流通の実態について発表した。
 文政7(1824)年刊の『加世田名勝志』等の文献から,京之峯の陶石は19世紀には,竪野や苗代川に出荷してことが理解できる。採掘現場跡には荒神が祭られてあり,そこに残されていた薩摩焼花瓶に記載されている文字には,寄進年(弘化4年)に続き肩書き入りの11名の名前が記載されており,そこには文政7年のイギリス海賊宝島襲撃事件で活躍した吉村九介(助)当人と思われる名前も連なってあった。京之峯の地権者たちに残されていた「字源助迫模合山帳」には,明治40年度に陶石の1俵単価が5銭と定められていたことが記されていた。
 今回の発表で,薩摩焼2点から陶工や加世田郷の役人が当地域を重要視していたこと,陶石の販売記録から生産・流通過程の実態の一部を発表できたのではないだろうか。――平成18年『南日本文化財研究』に,南さつま市埋蔵文化財センターの上東克彦氏と共同執筆したものを口頭発表。

2007年1月例会 - 2007.1.7 かごしま県民交流センター

鮫島美千代「記録からみる薩摩焼の陶石産地」
小川秀直「彼岸の行事」

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