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例会研究発表要旨

2006年度鹿児島民具学会例会

■伝承者追悼・大隅のふえと、幻の「天吹」
―伊達悠三郎先生への追悼の意を込めて

北村廣隆

 『天吹』は、奏者自身が個人的に楽しんできた楽器であった。また、楽器の性格(性能)からしても、これまで劇場空間で多くの聴衆を魅了するなどという事にはなり得なかった。

 『天吹』は古い時代には雅楽に用いられ、また神事や仏事での法器としても使われてきた楽器であった。そして、後に武士が 「たしなむ」楽器、さらに個人的に吹きすさぶ「独奏」楽器として伝承されてきた。また、近年になってそれすらも禁止されてしまったという歴史があった。

 現在は『天吹』という楽器の優れた音楽性を開発してゆかなければならない段階にある。限られた伝承曲とされているものだけを扱えば、「過去の文化財」としてのみで、魅力を失ない、活力に乏しくなり、早晩滅びる運命となるであろう。『天吹』は現代にマッチした楽器としての「進化」が待たれているように思う。

 古代から伝承されてきた『天吹』が、アジア・日本・鹿児島の現代文化の一翼を担う民俗器楽として現代を乗り切ってゆくことが出来得るのか? そして、何よりも、音楽情操教育楽器としての位置ずけは可能であるのか?。

 限られた伝承曲のみを扱うことなどを超え、伝統楽器、『天吹』という器楽の本来を踏まえつつも、新たな創作とによって、また、自由に吹くことのできる環境を整えることとで、身近な竹製楽器・縦笛『天吹』の「今日的な音楽性の開発と発展を妨げる障害」を払拭できるのかもしれない。

2007年3月例会 - 2007.3.3 かごしま県民交流センター

下野敏見「日琉境界のテゴとクワの重要性」
北村廣隆「伝承者追悼・大隅のふえと、幻の『天吹』」

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