下野敏見
日本の高倉は、アイヌの小熊用小屋から八丈島の倉、弥生遺跡出土の倉、トカラや奄美諸島、沖縄本島などの現存高倉まで、多種多様である。高倉に文様が刻まれているのは、上部の倉床に接する横木としての桁木である。奄美諸島では、倉梯子を架ける上部左右の桁木を中心として、四周の桁木に見られる。
その文様は、
Ⅰ 幾何学文様
1 直線文(三角文・四角文・条文・鉤文・剣文・碁盤目文)
2 曲線文(巴文、他)
Ⅱ 植物文(唐草文、みかん文)
Ⅲ 動物文(小鳥文、亀文)
Ⅳ その他
から、なっている。
高倉と似た文様は諸分野、各地に見られる。例えば人吉市古墳入口の文様、琉球文化圏のハーリー舟や入墨、ノロの玉ハベラ、藺傘、ずしがめ(骨壷)など、トカラの火の神の目や鳥居の笠木などにも見られる。
高倉の文様には、古墳の壁などに描かれた渦巻文や蕨手文、円文はないようである。高倉の文様はなんのためにあるのか、という謎については、①稲霊(あるいは穀霊)の収納防御場所、②構造上の防御機能、③文様の呪力、④特に倉の入口と四周を守る、ということがいえよう。
日本の中で、高倉の文様が多いのは、奄美諸島であり、特に喜界島の高倉文様は呪的でありながら多様性があり、美的である。喜界島に多い理由の探究が大事だ。
2007年5月例会 - 2007.5.12 かごしま県民交流センター