下野敏見
琉球文化圏だけに見られる呼称の初穂儀礼シキュマ(シチュマ)は、トカラ南部の宝島と小宝島にも見られ、シコマという。
宝島のシコマは米シコマと麦シコマがあり、小宝島では粟の初穂祝いもあったが、今は粟作をしないので、米の初穂を焼米にして祝っている。
宝島では、シコマの日、穂掛けをし、火の神と厨神に上げる。焼米もし、手管で落としたモチゴメの籾粒を鍋で煎り、搗き臼でつき、水を加えてシトギ団子にし、桑の葉に盛り、先祖、内神、火の神に供え、家族もいただく。
沖縄では、シチュマをシチマともいうが、語源はなんであろうか。
初穂儀礼は、種子島でも独特の田の神祭りがあり、初穂儀礼そのものは本土にも連なる。
なお、日本周辺の初穂儀礼と焼米はどうなのか。台湾、ラオス、中国についても見てみよう。
宝島の穂掛けは、稲穂を九本、火の神へ供え、八本厨神に供える。そして側に火の神の目という旗も供える。旗には菱形紋列をいくつも作ってあり、魔除けの主旨がつよい。
平島の穂掛けも特長がある。短い竹の棒に稲穂を何本も下げたのを内神に上げる。
種子島の田の神初穂は、穂のついた藁束を床の間に供えて、田の神として拝む。
トカラを核に、日本および周辺の初穂儀礼と焼米を見るとどうなるのか、考えてみたい。
2009年5月例会 - 2009.5.8 鹿児島市中央公民館