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例会研究発表要旨

2009年度鹿児島民具学会例会

■南九州の石の龍について

橋口尚武

 南九州(ここでは鹿児島県と宮崎県南部をさす)には、加工しやすい凝灰岩が多く、それらを用いて種々の石製品が作られている。その一つが龍の石製品で、鹿児島県内に二十八例、宮崎県に一例の分布を示す。宮崎県例だけが砂岩製である。

 これらの龍製品は、神社の手水舎の龍清水・龍の灯籠などに大別できるが、神社の灯籠には各種あって、
 一、雲龍の体内の灯籠を彫り込むもの
 一、琴柱型灯籠の笠に阿吽の雲龍を削り出すもの
 一、龍の頭部を四角に彫って灯籠とするもの
 一、龍そのものが龕燈状の灯籠を持つもの(以上すべて三爪)
などがある。

 それに江戸時代の年号を刻むものもあり、それらを古い方から年代順に並べると、
 ○貞享元年(一六八四)の薩摩藩の菩提寺福昌寺の石鉢をもつ龍
 ○延享二年(一七四五)の大崎町山下墓地の修験僧付随の龍灯籠
 ○寛延元年(一七四八)の菱刈町本城南方神社の龍灯籠
  ………その他数点菱刈町にあって………
 ○安永七年(一七七八)の岡山県尻海の若宮神社の琴柱型灯籠
などとなっている。

 岡山県尻海のように鹿児島市内の凝灰岩で作成された琴柱型灯籠が運ばれた例もあり、さらに県内では町健次郎によると奄美の瀬戸内町まで運ばれた龍製品もあって、その流通範囲は割りと広いことに気付く。

2009年7月例会 - 2009.7.4 鹿児島市鴨池公民館

橋口尚武「南九州の石の龍について」
徳留秋輝「八重山群島のドンソン文化と仏教文化」

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