下野敏見
トカラ列島は黒潮が直接洗う七島灘の地域で、魚の宝庫。漁法もさまざま。サワラは、刺身にしても味噌漬けでも、天日乾燥のミガキでも、藁の素巻にした保存食料としても重要で、しかもおいしい魚だ。
その伝統漁法は丸木舟の出漁で始まる。サワラオヅキという大型の突き道具を持ち、舟べりでアスナロウの木の餌木を用いて、サワラを誘い出して突く。あるいは、イカの疑似餌を用いたホロマギイ(引縄)による漁法などあって、大変興味深い。
サワラ漁はまず、潮を見て舟を出す。何の潮の時、どこにいると目指して行く。餌木はムロの魚を擬した数十センチ長さのもので、紐をつけ、竿につけて、舟ばたで泳がせる。サワラが寄ってきてもしばらくは泳がせ、すきを見て大型三ツ股のウヅキで突く。
突くと、手に持つホコ棒と、三ツ股のオヅキは離れる。オヅキにはヨマ(紐)が四十メートルもついていて、それを操ってサワラを引き寄せる。
ツノと呼ぶ疑似餌によるツノ釣りは、イカの姿をした餌木に長い紐をつけて海に流して釣る。丸木舟で帆走しながら釣る。これをホロマギイという。
時代と共に漁法も変わっていく。丸木舟は今は全くなく、発動船による漁法になった。しかし、サワラはおいしい魚で、トカラの人々にとっては重要な食糧源。サワラ漁はなくはならない。サワラ漁は注目の漁法である。
2009年9月例会 - 2009.9.5 鹿児島市中央公民館