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例会研究発表要旨

2010年度鹿児島民具学会例会

■阿久根脇本の黒糖つくり

牧洋一郎

 鹿児島県本土では、阿久根市脇本地区の松木製糖工場(個人経営)が唯一、毎年初冬に黒糖つくりを行っている。この工場では、石灰を入れずに製造することが特徴である。数年前までは、僅かに石灰を入れていたが農事試験場職員の「石灰を入れなくとも糖度が高ければ固まる」という助言により、それ以来、石灰は使用していない。なお、特筆すべきはやはり同職員の助言により、砂糖黍に付着している白い粉は価値(ミネラル)があるので洗い落とさない、とのことである(一般には、洗い落としてから黍を絞る)。そして、商品化された黒糖は工場や地元の道の駅などでも販売され、更に県外にも出荷され好評とのことである。

 製造工程は概ね左記の通り。

  1. 黍の収穫は、各農家により手作業によって丁寧に行われる。
  2. 黍の絞り汁は、工場内の小型圧搾機による。 
  3. 黍の絞り汁は、次の工程で煮詰められる。①一番鍋、次にかき混ぜながら二番鍋から三番鍋へと移されて行く。最後は角鍋で。②火加減、沸騰の具合、そして煮えてくる状況など観察には経験を要する。
  4. 空気を入れ、練りあげを丹念に行う。冷めてくると固まる。
  5. 型に流し込む。
  6. 製品・商品の出来上がり。

 ここでは、後継者がいないのが問題とのことである。しかし、地域再生・農村活性化のためにも、無添加の伝統的甘さや風味を作りだす昔ながらの伝統的黒糖製法は更に受け継がれていかねばならぬといえよう。       

2010年5月例会 - 2010.5.8 鹿児島市中央公民館

下野敏見「与論シニグ祭りと民具」
牧洋一郎「阿久根脇本の黒糖づくり」

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