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例会研究発表要旨

2010年度鹿児島民具学会例会

■汝官窯の奩形香炉発見される

徳留秋輝

1.はじめに

 7月24・25日の鹿児島空港の近くのスカイロード溝辺で開催された九州骨董祭りで、非常に高価であったが口径15.4センチの汝官窯のホヤ付きの奩形(れんけい)香炉を購入した。店主は鈞窯の青磁だとお客に説明していた。私は、焼き上がりの素晴らしさに目を奪われた。このような素晴らしい青磁を見たのは始めてであった。後に、私はこの香炉を汝官窯の青磁だと鑑定した。汝官窯の青磁は世界にも非常に遺品が少なく貴重だという。この奩形香炉が汝官窯の青磁であることを実証したい。

2.汝官窯とは

 北宋時代は、社会経済・文化がきわめて繁栄興隆した時であった。窯業生産も官窯、民窯ともに大きな発展をみせ、歴史上最高の水準にまで達した。汝窯の青磁は、北宋(960~1127)末の徽宗皇帝の時、宮中の御用品として焼かれていた。しかし、長く実態がわからなかったが、近年この種の青磁がそれにあたるといわれるようになった。青みをおびた明るい青磁釉が厚くかかり、全面にこまかい貫入が白く光っている。遺品はごく稀で世界にも百点は無いものである。一般に汝官窯という名で呼ばれている。

3.奩形香炉の特徴

①青みをおびた明るい青磁釉が厚くかかっている。
②高台の裏側に五個の小さな目跡がある。
③ロンドン・デヴィッド・コレクションと北京の故宮博物院が蔵する奩形香炉に器形が同じである。
④高台の内側に10字からなる銘がある。
 美人梳洗時
 満天龍珠翠
⑤ホヤ
 後世に造られた純銀製のホヤがある。
 信幸造の銘がある。

4.おわりに

 私が入手した奩形香炉は、青みをおびた明るい青磁釉が厚くかかっている。高台の内側に目跡が数個あることやき器形が北京の故宮博物院やロンドン・デヴィッド・コレクションの香炉の器形と非常に似ていることから考察すると汝官窯の作品であると思われる。わが国に招来した時期については分からないが、しかし、今日まで非常に大切にされてきたことは疑いない。

2011年1月例会 - 2011.1.8 鹿児島市中央公民館

徳留秋輝「汝官窯の奩形香炉発見される」
下野敏見「沖永良部島の民具」

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