高重義好
日本に渡来した鬼子母神は、特に日蓮系諸寺に祀られ檀家信徒に信仰されている。
旧薩藩の仏教は禅、真言、天台、浄土等があり鬼子母神を祀る日蓮系諸宗は種子島を除くと極めて少ない。これは薩摩藩(種子島を除く)が鬼子母神信仰が希薄なことを示すものと言えよう。
日向・佐土原に鬼子母神で著名な法華宗吉祥寺がある。廃仏毀釈を逃れた寺で鬼子母神社の方が名が通る。吉祥寺は慶長8年に初代佐土原藩主島津以久が建立、開山は種子島・慈恩寺僧日種である。以久は三州豪族の封地改易で文禄4年より慶長4年まで種子島を領し、その縁で種子島から日種を招き吉祥寺を建立した。同寺は旧暦1月に鬼子母神縁日があり、秘仏の鬼子母神の御開帳がある。秘仏は子供の守り神で、幼児の肌着を奉納して健康を祈願する習俗がある。種子島でも同じ習俗が伝承されている。
鹿児島城下には法華宗正建寺がある。当寺は16代久時が慶長2年に薩摩の配下となり、17代忠時が居を鹿児島に移し、種子島の菩提寺も移したもの。本堂に四体の鬼子母神を祀る。
指宿市新西方に正建寺21世日潤が開いた日潤寺がある。同寺に「延享二年創建 鬼子母神霊場 水子供養 厄払い 各種祈祷法要」の案内板がある。本堂に高さ1メートルもある総髪合掌形の鬼子母神を祀る。1月8日が鬼子母神祭り。
松原町に千葉県市川市の日蓮宗大本山法華経寺末の教王寺がある。総髪合掌の異形の鬼子母神を祀る。正月寒中の水祈祷は有名。
2012年3月例会 - 2012.3.3 鹿児島市中央公民館