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例会研究発表要旨

2023年度鹿児島民具学会例会

■フィールドワーク南さつまの伊勢講行事

御鍵宗充・井上賢一

 南さつま市各地に伝わる伊勢講は、伊勢神宮への代参講が起源と伝えられ、宿移り習俗や疱瘡踊りなど、伊勢神の力にあやかり、集落安泰・疫病退散などを願う複合的な習俗への発展してきた。この度、2024年2月11日に御鍵・井上で笠沙町の共同調査を実施したので、実地に即して報告したい。

 笠沙町小浦では、本来、エビスでの神事の後、公民館に戻り伊勢講の神事を執り行い、マチマワリと呼ばれる宿移り習俗が見られる。本年は雨天のためエビス祭りも公民館で行われた。元々伊勢講は網元たちが行っていたもので、神輿を担ぐのは二才入りの青年の役割だった。笠沙町片浦では、公民館での神事のあと、大笠(だいりゅう)中学校の生徒4人も参加して、ネリアルキと呼ばれる宿移り習俗が見られた。神輿の前には、仮装して模造刀(ケン・ナギナタ)を持つ「振り子」が続く。それを左右にゆすりながら、「オイヤナー」の威勢の良い掛け声が響く。叩かれると無病息災という。

 南さつま市の伊勢講の構造は、宿決め→宿移り→宿迎え。加世田小松原では宿決めのくじ引き習俗が残る。海村部の笠沙町で宿移り習俗が盛ん。一方、農村部の大浦町と加世田久木野で、疱瘡踊りが宿迎え習俗で伝承されている。

 県指定無形民俗文化財の大浦の疱瘡踊りは、コロナ禍で中断し、今年も再開ができなかった。疫病退散の意味でも復活を望む。女性が練習にも参加しやすい社会環境も必要だと思われる。
 他の講や関連習俗との比較検討も、今後進めていきたい。

2024年3月例会 - 2024.3.10 鹿児島県歴史・美術センター黎明館

牛山好治「木場地区のモッゾ様と枕崎の信仰をめぐる民具を訪ねて」
御鍵宗充・井上賢一共同発表「フィールドワーク南さつまの伊勢講行事」

鹿児島民具学会の歩みと活動2023年度


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