*南さつま歴史街道 - 民俗

南さつま市の無形民俗文化財から

南さつま市位置図井上賢一口頭発表:原題「南さつま市の文化財―南さつま市の無形民俗文化財から―」(2008.5.21南さつま市民会館における平成20年度鹿児島県揖宿・川辺地区文化財保護審議会委員研修会「文化財紹介」)

1 南さつま市の指定文化財

(1) はじめに

南さつま市地図 皆さんこんにちは。ようこそ南さつま市へいらっしゃいました。今日は天気がいいですね。カーテンを閉めてビデオを見るより、本当は戸を開けて、史跡巡りにでも出かけたいところです。
 さてこれから、今日現地に行っても見られない文化財を紹介します。何でしょうか。―無形民俗文化財です。郷土芸能や伝統行事の分野です。これは行われる日にちが決まっているので、今日は現地では見ることができません。そこで、私が歩いて、見て、考えたことを、ビデオをとおしてこれから紹介していこう思います。地域研究を長年続けられてきた先輩の皆様の前でお話しするのは大変恐縮ですが、よろしくお願いいたします。

(2) 南さつま市の指定文化財

 南さつま市には、次の表のように、113件の指定文化財があります。また重複しますが国選択無形民俗文化財が3件あります。国登録有形文化財には「丁子屋石蔵」が現在登録されており、さらに2008年7月に加世田万世の大崎公民館の建物とレリーフなどが登録されることとなっています。

表1 南さつま市の指定文化財件数
文化財の種類 国指定
(特に重要なもの)
国指定
(重要なもの)
県指定 市指定 指定
合計
登録・選択
文化財
有形文化財 建造物 有形文化財(建造物)
3
3 登録
有形文化財 1
美術工芸品 重要文化財(美術工芸)
1
有形文化財(美術工芸)
4
有形文化財(美術工芸)
29
34  
無形文化財 芸能 0
 
工芸技術 0
 
民俗文化財 無形
民俗文化財
重要無形民俗文化財
1
無形民俗文化財
3
無形民俗文化財
5
9 選択
無形民俗文化財 3
有形
民俗文化財
有形民俗文化財
2
有形民俗文化財
7
9  
記念物 史跡 史跡
1
史跡
2
史跡
43
46  
名勝 名勝
1
1  
天然記念物 特別天然記念物
1
天然記念物
2
天然記念物
1
天然記念物
7
11  
文化的景観 0
 
伝統的建造物群 0
 
合計 1 6 12 94 113 登録1・選択3

2 南さつま市の無形民俗文化財から

 113件の指定文化財のうち、無形民俗文化財として9件が指定されています。無形民俗文化財の分野は年中行事や民俗芸能のほか、衣食住など生活の習俗や、生業、信仰、遊びに至るまで、市民が伝承してきた幅広い習俗になります。指定されているものは、そのうち極一部です。
 また、南さつま市は平成17年に市町村合併を経験しましたが、それまでの旧市町の指定文化財をすべて、新しい南さつま市の文化財として引き継いでいます。旧市町では、それぞれの基準、視点、史観から指定されていたものです。新聞やテレビでもおなじみの祭りや郷土芸能で指定されていないものや、列島の文化史から見たときに大変貴重だと思われるもので指定されていないものも見られます。
 下にいくつか南さつま市の無形民俗文化財を並べてみました。例えば、坊津のガラガラ船や金峰の鬼火焚き、笠沙の伊勢講行事、大浦の山の神祭り(大草履を引く)など、マスコミでも毎年取り上げられるものも、無指定の、いわゆる一般文化財となっています。また、加世田小湊の金屋子神講は、加世田鍛冶の講として貴重なものだと思われますが、これも一般文化財です。


(1) 風俗習慣

○娯楽・競技
ガラガラ船・【国選択・市指定】ヨッカブイ(高橋十八度踊り)
○年中行事
鬼火焚き・ハラメウチ・十五夜(【国指定】南薩摩の十五夜行事)・歳の市
○祭礼(信仰)
伊勢講・御影講・豊祭・内神祭り・金屋子神講・山の神祭り

(2) 民俗芸能

○風流
疱瘡踊り(【国選択・県指定】大浦町の疱瘡踊・【市指定】鳥越ほうそう踊り)・
太鼓踊り(【県指定】津貫豊祭太鼓踊・【市指定】尾下太鼓踊り)・
棒踊り(【市指定】笠沙町市崎木場・姥の棒踊り)・【県指定】士踊・【市指定】泊十五夜踊り
○舞台芸
【国選択】薩摩の水からくり(【県有形民俗】加世田の水車カラクリ

(3) 民俗技術

阿多張り煙管・加世田鍛冶


 地域の文化財の再評価をどのように進めればよいのか。どのような観点から無形民俗文化財を見ていけばよいのか。次では実際の習俗についてビデオを見ながら、考えていきたいと思います。

3 南さつま市の春夏秋冬の習俗

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