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ガラガラ船(カラカラ船)は、舳先に付けた綱を引っ張って遊ぶ、郷土玩具の車付き帆掛け舟。実測したものは、船の長さ55p、幅22p、高さ14p。船体は木造。帆の幅は31p、高さ36p。帆は布製。
ガラガラ船は、遊びの少ない時代に、親が作ってくれたものという。漁師の家だけではなく、男の子がいるところはどの家でも作ってもらえた。この船は、毎年作り変えるということはしない。兄から譲られたりもする。船大工に頼むわけではなく、各家で手作りした。
坊津では五月節句には、このガラガラ船を浜で引いて競走をした。泊地区では、近年こどもの日のイベントとして、「唐カラ船祭り」を催している。地区内の子供たちが「ハンヨーイ、サーサー」の掛け声で九玉神社までガラガラ船を引いて行列を作る。郷土芸能や餅撒き、ガラガラ船競走と賑やに繰り広げられる。
ガラガラ船には、「サイの子(猿の子)」と呼ばれる布で作った人形がいくつも付けられている。泊区の公民館長さんによれば「昔、カツオ船が嵐にあったとき、どこからか猿の子がやってきて、帆を降ろしてくれた。船の守り神」と伝えられているという。またある人は、「風がサル(去る)」からつけているともいう。
私は、木造和船の造船に伴う、山と海の交流が感じられる習俗だと思われた。また泊では、鯉のぼりをあげないという。鯉のぼりをあげると「風が出るので」禁忌となっているようだ。(2005.5.5調査 坊津町泊地区)
ビデオ:南さつま市坊津町泊のガラガラ船
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