井上賢一
筆者は研究活動の一環として、2000年9月から、薩摩半島の民俗文化を紹介するホームページ「半島文化」を公開している。地方情報を発信するホームページに何が求められているのか、ここでは考えてみたい。
当初、研究者の閲覧を目的としていた。しかし製作者の意図とは異なり、研究者以外の見知らぬ鹿児島出身の方々から、励ましのメールをいくつか受けた。子供向け検索サイトからのアクセスも多い。「碁石茶」や「日新公いろは歌」、「博物館リンク集」など体系的で個性的なページが人気がある。今後は、ビジターのための軽快でアクセスしやすいページと、リピーターや子供たちにも親しみやすい新鮮で動的なページを織り交ぜて、サイトを整備していきたい。
さて、市町村合併が進む中、地域の個性が失われることが心配されている。しかし、行政の境界が動くことが、伝承母体の崩壊に直接つながることなのだろうか。ホームページの公開をとおして、県外へ転出した人々のふるさとへの思いが、地元に暮らすもの以上に強いことにも気付かされた。
これまでのインターネット社会は、必ずしも利用者のためのものであったとは思えない。あるいはIT技術をもった者だけの世界だったのかもしれない。これからはホームページづくりをとおして、誰もが情報発信することのできる時代になる。そこではきれいなホームページは必要ない。個性のあるサイトが求められているのである。そのことを常に考えながら、鹿児島の半島文化を考え、ウエブサイト「半島文化」を成長させていきたいと思う。
2003年5月例会 - 2003.5.24 鹿児島市中央公民館