橋口尚武
伊豆諸島の漁業習俗を中心に、島人の生活の実態を紹介していきたい。
島の漁師はカツオ・メジマグロなどの漁をするにあたって、カツオドリ(オオミズナギドリ)の群れ(ナミラという)に向かって漁船を進め、その下で漁をする。御蔵島では年に900羽のカツオドリの捕獲が許されており、同時にそれは島の貴重な動物性蛋白質でもあったし、その肉醤は調味料ともなっていた。
伊勢海老漁の前のウツボ漁―10月になると来月の伊勢海老漁の前に決まってウツボ漁を行う。ウケを利用するが、漁場に仕掛けたウケを引き上げ、その収穫物は平等に分配する(神津島)。ウツボは干して食の対象とするが、その海域は太平洋岸に限られている。
神津島では、収穫物は船主を除いてほぼ平等に分配し、網を修理する老人にも分配されるし、完全に引退している老人にも幾分か配られる。
伊豆諸島にも飛魚がある。3月八丈島・神津島で漁に従事し、東京市場、自家消費、クサヤに生産する人々など様々である。クサヤはクサヤ菌に一晩漬けて魚のうまみを引き出して干物にするもので、魚なら何でもよい。
伊豆諸島にはかつて塩配という魚醤があって、潮(海水)ととも島人の調味料として利用されていた。現在は八丈島の一部・青ヶ島で作る人がいて、いわゆる魚醤油として機能していた。
丈夫な綱を作るための大型防水車が伊豆諸島の一部や伊豆半島の基部の西浦に残されていたのを、神津島で復元した。
今後も伊豆諸島の様々な漁法や海にかかわる習俗、さらに人々の暮らしの実態についても発表する機会があれば良いと思う。
2003年7月例会 - 2003.7.5 かごしま県民交流センター