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例会研究発表要旨

2004年度鹿児島民具学会例会

■牧の神と牛馬をめぐる民俗

下野敏見

 南九州~薩南諸島の牧の神と牛馬をめぐる民俗は、かつてゆたかに展開していた。
 牧の神は、呼称からは、牧の神、マッガン(牧神)どん、馬頭観音などの別があるが、その依り代は、松の大木、巨石、石塔、石祠などがある。
 牧に関する行事は、牧祭り、カネヤキ(ウマヤキ)、バトカン祭り、クヨチッ(供養築き)、馬追い、オロ(苙)ゴメ、オロンマエなどがある。
 牧の構造は、苙、串目、東門、駒走り、ラチ(埒)、牧があり、牧の種類としては、私牧、御牧、塩屋牧司、牧見舞(牧見廻)、牧本などがあった。
 牛馬の諸伝承として、ハクラッドン、コンビョウ、バクヨ(バクユ)、バイドンなどがあり、牛馬に関する伝説は、トシドンと首切れ馬、名馬池月、取違い伝説など、いろいろと多い。
 牛馬は、大陸から日本へ渡来した動物であるが、体形の改良と牛馬具の変遷なども注目せねばならない。
 南九州は古来、日向の駒の語で知られるように、名馬の産地でもある。その飼育目的は、乗馬用のほかに運搬、農耕用もあった。農耕では、田に数頭の馬又は牛を放ち、追い回して足耕させるホイトウという犂以前の踏耕法もあった。
 ゆたかな南九州~薩南諸島の牛馬の民俗は、伝承の消えないうちに早く記録する必要があるようだ。

2004年5月例会 - 2004.5.29 かごしま県民交流センター

東和幸「弥生時代の竜」
下野敏見「牧の神と牛馬をめぐる民俗」

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