牛山好治
枕崎市には、下園集落の指定文化財「モモカンドン」(五箇所…門割制度の門)がある。下園集落の「モモカンドン」は、その形態から牛の舌頭であり、唄の「モーモー」からの名称であること、及び牛神(一種の農耕神)であると説明されている〔小野重朗『民俗神の系譜』〕。
「モモカンドン」の概要を説明し、近隣集落との比較で名称等の相違性について考える。近隣集落は、明治以降に区割りされた宝寿庵区内にあり、下園、中村、篭原、瀬戸口、宝寿庵で構成され、宝寿庵以外の四集落は、幕末の門名を存している。
ご神体が自然石で、門内神の側に位置し、旧暦十月亥の日の祀りで、藁ツトに入れた牛の舌餅と丸餅を供えた後、餅を参加者が唄いながら引き合う、下園集落の「モモカンドン」に類似した形態が近隣集落にある。
下園集落「モモカンドン」、中村集落「田の神サア」、篭原集落「モモカンサア」。
名称やご神体(自然石)が無い瀬戸口集落等の「亥の日」行事の違い等を紹介する。また、「モモカンドン」以外の呼び名、ご神体(自然石の)形状等についても説明。
「モモカンドン」「モモカンサア」は、牛神より稲作の豊穣を強く願う神であるご神体(自然石は)、丸石、角石で角石が多く、牛の舌に似た形状の石もある。開田(新田開発)のため、田の畔にあったご神体を門内神の側に移したのではないかと推測する。
まとめに、牛神と田の神のいずれも「農耕神」と考えれば、四集落の「亥の日行事」は、「稲作信仰」にまとめられる。名称などの違いはあっても、今後四集落の特徴を生かした統括的な文化財保存が必要である。
2023年3月例会 - 2023.3.12 鹿児島県歴史・美術センター黎明館