羽島崎神社の太郎太郎祭り

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「羽島崎神社の太郎太郎祭り」基礎データ

羽島崎神社の太郎太郎祭りは、海と里、二つの祝い(予祝儀礼)からなる複合行事です。まず、航海安全を願って、子供が船の模型を持ち、境内を回ります(フナモチ)。その後、大人が船歌を歌います。続いて、稲作の模様をユーモラスに演じる豊作祈願のタウチ習俗(田遊び)が見られます。

「羽島崎神社の太郎太郎祭り」写真と解説

1.船持ち習俗(航海安全予祝儀礼)

船持ち祝いの模型船舟唄太郎太郎祭りの田植え太郎太郎祭りの田打ち

羽島崎神社(いちき串木野市羽島地区)の太郎太郎祭りは,漁撈・農耕二つの予祝儀礼からなる複合行事。航海安全を願うフナモチ習俗(船持ち・船唄)と,豊作祈願を願うタウチ習俗(田ごしらえ・牛使い・田植え)を,毎年順番を替えて行う。旧暦2月4日(現在はそれに近い日曜日)に行われる。

船持ち祝い-*○参加者…フナモチは「五つ祝い」として,浜地区の五歳になる男の子が行う。親戚に不幸があった場合は七歳又は九歳の時に行う。転出者が戻ってきて祝う場合も多い。

○使用民具…長さ80㎝~1mの木造模型船。普段は神社の中に収められている。一番船の米船と,それ以下の唐芋船,ダンベイ船などがある。米船には飾りが何も無い。その他の船は帆掛け船や機帆船・動力船などを模している。

○習俗内容…拝殿で打つ太鼓を合図に,頬被りに緑(又は青)の襷をかけた五歳の男子が,父兄にだかれ,父兄の力もかりて何人かで模型の船を持ち境内に出る。この際,介添えは両親健在の人がやり,四人くらいで一隻を持つ。かつてはもっと多かったという。米船が一番船で,中には米を入れる。フナモチが終わると子供たちにそれを分け与える。米船は長男だけが持つことができる。二番船以下は順番はない。それらには中には何も入れず,次三男以下が担ぐ。この行列の先頭には頬被りに紋付の尻はしょり姿の,浜部落の長老が付く。艪をこぐしぐさをし,「とりかじやー」などと掛け声をかけて進む。長老は世襲制ではない。30mほど行くと今度は引き返し再び拝殿に戻る。

○参考…鹿児島県内にはこのほか,日置市吹上町船木神社の「船こぎ祭り」でも,模型船を用いる儀礼がある。

2.田打ち習俗(農耕予祝儀礼)

太郎太郎祭り右下の写真は1992年撮影した牛使い(田起こし)の場面。テチョ(親父役・左の写真)と太郎(子供役)による即興のこっけい問答の末,拝殿の後ろから太郎に引かれた牛が登場。牛役は,赤白黒の大きな鼻綱の付いた面を被り,体を黒い布で覆っている。股間には,中央がくびれた一升入りの米俵で作った大きなふぐりが下がっている。牛は境内でハナトイザオ(鼻取り竿)を振り解いて逃げ回り,角で見物人を突いたりして大騒ぎ。ようやく捕らえた牛に何とかモガ(馬鍬)を付け,田をすく。太郎がハナトイザオを引き,テチョがモガを持つ。牛の面は,縦37.5cm×横20cmの木製面。裏に「安永十年丑二月四日 有馬□□□ 奉□□」の墨書がある。

太郎太郎祭りこのタウチ習俗には,在地区(農村集落)の5歳になる子供が,「田ごしらえ」と「田植え」の場面に登場する。頬被りに,あずき色(又は青色)の襷がけ。また漁村集落にあたる浜地区の子供たちは,フナモチ習俗に参加する。いずれの場合も,祭りの後は各家で盛大に「五つ祝い」を行う。一方,旧士族集落の海士泊ではどちらにも加わらなかったという。こうした農漁双方の予祝行事を同時に行う習俗は鹿児島県内には見られず,村落社会構造を考える上でも貴重な伝統行事といえる。


〔実地調査〕
1992.3.7 / 2012.2.26 午後2時半から羽島崎神社。

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