加世田の水車カラクリ
「加世田の水車カラクリ」基礎データ
竹田神社夏祭りには、神社前の用水路に、水車が据えられ、その上に特設のカラクリ舞台が掛けられます。「加世田の水車カラクリ」は、その水車の力を利用して、舞台上の人形を回す郷土芸能です。人形は等身大ほどもあり、舞台の上で勇壮に回ります。
- 場所:鹿児島県南さつま市加世田武田 竹田神社前の益山用水路( - かせだ たけだ・たけだ神社 - ) →地図
- 日時:毎年7月23日(前日22日夜から公開)
- 文化財指定:知覧の水車カラクリと併せて「薩摩の水からくり」として国選択無形民俗文化財となっています。また、「加世田の水車カラクリ」と「知覧の水車カラクリ」は、それぞれ別々に鹿児島県指定有形民俗文化財にもなっています。 日本遺産「薩摩の武士が生きた町 - 武家屋敷群『麓』を歩く」構成文化財。
- メモ:人形制作は、一月ほど前から神社脇の「竹田神社参集所」で行われます。夏祭りの数日前になると水車と舞台が設置され、前日に人形が据えられます。その日(22日)夜から公開(ライトアップ)されています。士踊りは神社境内で奉納されるものですが、水車カラクリは出し物の一つとして参拝者に披露される伝統行事です。
「加世田の水車カラクリ」写真と解説
1.南薩摩における水車カラクリ
南薩摩における水車カラクリは、用水路にかかる水車を動力として、人形を動かす伝統芸能であり、南薩摩地域に分布し、夏祭り六月灯で披露されるもの。
伝承地分布は、人力で回すものまで含めると、日置市・南さつま市・南九州市の15か所にあったことが分かっている(そのうち水車によるものは11か所)。現存しているものは、日置市吹上町の吹上温泉祭り(湯之権現六月灯)、南さつま市加世田の竹田神社夏祭り、南九州市知覧町の豊玉姫神社六月灯の各祭礼で披露される。
起源は不確だが、灌漑用水路を利用する点に着目すれば、現在の水車カラクリの形に形態が整えられたのは、早くても18世紀中旬以降と考えられる。
2.加世田の水車カラクリ舞台
加世田の水車カラクリでは、垂直方向の動力を、歯車により水平方向の力に転換させている点が注目される。つまり動力の伝達は、水車(垂直回転)→歯車(動力転換)→舞台上の人形台トンボ(水平回転)となっている。一方人形は、知覧のものと異なり、2体の等身大の人形が、水平回転するだけのものとなっている。演題は、島津忠良(日新公)の武勇を伝えるものが多く、武者人形が勇壮に回る。竹田神社の事例は、人形を見せる「回り舞台型」水車カラクリといえる。
→詳しい解説は「水車からくり・六月灯(ろくがつどう)」
3.加世田の水車カラクリ人形
人形は頭・胴・手足のパーツからできている。
以前は、竹網で人形の形を作り、米糊で和紙を貼り、その上に水に浸した新聞紙で整形し、顔料系塗料を塗って仕上げた。
現在の頭は金網製で、紙粘土によって肉付けする。胴は竹網製のものを毎年使いまわしている。また、手足は藁を芯にしている。馬も金網製の枠組みを使いまわす。
「加世田の水車カラクリ」2001年以降記録映像・記録画像
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総集編「薩摩の水からくり」 - YouTube薩摩半島民俗文化博物館チャンネル
〔実地調査〕
1992年以降の毎年7月23日。制作過程は、2003年7月3日に調査したもの。
〔参考文献〕
拙著「祭礼の中の水車からくり―南薩摩における研究視座の提示」(『鹿児島民具19号』,2007年鹿児島民具学会編・発行に所収)
拙著「万之瀬川流域の農村水車カラクリ人形芝居」(民俗文化財調査事業報告書『薩摩の水からくり』、1997年知覧町教育委員会発行に所収)