坊津の十五夜
「坊津の十五夜」基礎データ
鹿児島など南九州では、旧暦八月十五夜には、綱引きをします。各地の綱引き行事は、「材料集め」→「綱作り」→「綱引き」+「綱の再利用(相撲)と綱流し」から構成されます。坊津の十五夜行事では、火とぼし・テツナッゴ・茅被り・茅カルなど、多彩な材料集め(茅下ろし)習俗が見られます。また、十五夜踊り・お月さまの輪作りなど、十五夜当日のさまざまな付随習俗も、特徴となっています。
- 場所:鹿児島県南さつま市坊津町各集落( - ぼうのつ)→地図
- 日時:毎年旧暦8月15日(準備は旧暦8月1日の八朔から)
- 文化財指定:国指定重要無形民俗文化財「南薩摩の十五夜行事」(南さつま市旧坊津町・枕崎市・南九州市旧知覧町)
- メモ:綱練り(綱作り)以外の各習俗は、いずれも日没ごろからです。ただし、準備段階の茅下ろし習俗(火とぼし・テツナッゴ・茅被り・茅カルなど)は、毎年開催日が変わります。坊津歴史資料センター輝津館(きしんかん)などで、日程確認をしてから、いらしてください。
「坊津の十五夜」概要
1.坊津の十五夜一覧
材料集め |
十五夜綱の材料は、カヤ(茅)やワラ、それにカズラ。坊津では、カヤを山から取ってくるときに、様々な行事(茅下ろし)がある。カヤの束を作る「番茅(ばんがや)作り・ヨメジョ作り」、火を灯して、山からカヤを下ろすことを知らせる「火とぼし」、カヤを頭からすっぽり被って下りてくる「カヤ被り」など。南九州市のソラヨイも、「カヤ被り」と同様の装束で行われる。 |
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綱作り |
カズラを芯に、カヤやワラをない合わせ、大綱をなう。これを鹿児島では「綱練り」と言う。綱練りには、木でやぐらを組んで練る方法(櫓組み式)と、地面に置いて転がしていく方法(道伸べ式)の2種類がある。やぐら式の綱練りでは、芯になるカズラに子供がぶら下がり、しっかり締めていく。坊津では泊地区が道置き方式、他の地区は櫓組み式の綱練りを行う。上之坊では芯のカズラはなく、茅だけでなう。 |
綱引き |
南さつま市の綱引きには、運動会でよく見られるような綱引き合戦をする地区と、綱を引きずって集落を回る「綱引きずり」を行う地区がある。坊津町では久志で綱引きずりがあるほかは、綱引き合戦を行う。綱引きずりなどの綱運び行事は、南さつま市加世田の海浜部(万世地区)や南九州市・指宿市の海辺で見られる。 |
綱の再利用(相撲)と綱流し |
綱引きが終わると、綱を回して土俵を作り、相撲を取る。坊津では、綱引き本番までの準備期間にも、連日十五夜相撲を取る。 |
2.十五夜に綱引きをする意味
十五夜の綱は、竜や蛇を表現しているとも考えられる。蛇は脱皮して生まれ変わりる。また月も、満月と新月を繰り返す。つまり、蛇も月も、いわゆる「死と再生」を繰り返していると言える。そのことが、不老不死、ひいては健康祈願の願いにつながっている。綱を引きずったり、川や海に投げ入れるのも、「竜蛇に悪いモノを憑かせて、集落を清め、再生させる」と意味が込められている。
また、月が出ると、夜露が降りる。露は、水をイメージさせ、水は農作物にとって大切なもの。このことから、豊作祈願の願いにつながっている。
したがって、「健康祈願」と「豊作祈願」を祈るために、十五夜で、綱引きが行われる。
→詳しい解説は、「薩摩半島における十五夜行事の構造」
「坊津の十五夜」記録映像・記録画像
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総集編:薩摩半島の十五夜行事
〔実地調査〕
1991年以降の旧暦八月十五日前後に、鹿児島県内各地で調査。