知覧の水車カラクリ
「知覧の水車カラクリ」基礎データ
知覧の水車カラクリは、毎年7月9日・10日の両日、豊玉姫神社の六月灯(ろくがつどう。鹿児島の夏祭りの呼び名)で披露されます。加世田の水車カラクリと異なり、浄瑠璃人形に似た30センチ前後の人形が、個性豊かにさまざまな動きを見せます。
- 場所:鹿児島県南九州市知覧町郡 豊玉姫神社( - ちらんちょう こおり・とよたまひめ神社) →地図
- 日時:毎年7月9日・10日。
- 文化財指定:加世田の水車カラクリと併せて「薩摩の水からくり」として国選択無形民俗文化財となっています。また、「知覧の水車カラクリ」と「加世田の水車カラクリ」は、それぞれ別々に鹿児島県指定有形民俗文化財にもなっています。
- メモ:7月9・10日の六月灯のほか、お盆、知覧ねぷた祭(最近始まった青森県旧平賀町との交流イベント)にもカラクリが動いています。加世田のカラクリ舞台は夏祭りだけの特設舞台ですが、知覧のカラクリは常設の「水からくり やかた」で上演されます。したがって動かない人形でよければ、いつでも見ることができます。また、境内の「からくり仕事処」では、過去に使用した人形が展示されています。
「知覧の水車カラクリ」写真と解説
1.南薩摩における水車カラクリ
南薩摩における水車カラクリは、用水路にかかる水車を動力として、人形を動かす伝統芸能であり、南薩摩地域に分布し、夏祭り六月灯で披露されるもの。
伝承地分布は、人力で回すものまで含めると、日置市・南さつま市・南九州市の15か所にあったことが分かっている(そのうち水車によるものは11か所)。現存しているものは、日置市吹上町の吹上温泉祭り(湯之権現六月灯)、南さつま市加世田の竹田神社夏祭り、南九州市知覧町の豊玉姫神社六月灯の各祭礼で披露される。
起源は不確だが、灌漑用水路を利用する点に着目すれば、現在の水車カラクリの形に形態が整えられたのは、早くても18世紀中旬以降と考えられる。知覧の水車カラクリは、太平洋戦争中に途絶え、昭和54年に復活している。
2.知覧の水車カラクリ
知覧の水車カラクリは、垂直回転する水車の動力を、調べ帯(ベルト)を通して舞台下の調べ車(滑車)に伝える。そこからは力を分散し、次のような機構に伝える。基本的には、垂直方向の動力をそのまま利用している。しかし、上記の機構や人形自体に取り付けられた紐を利用することによりさまざまな動きをつけている。
- ツルギ…キャタピラ型の木製移動人形台。
- 間欠歯車(かんけつはぐるま)…歯車の歯の一部をわざと欠かしておき空回りさせる。
- 歪輪(わいりん)…歪んだ滑車で、波を打たせるような動作をさせる。
人形は、浄瑠璃人形に似た30センチメートル前後のもので、多い時には20体以上が舞台上に据えられ、個性豊かな動きを見せる。演題は、昔話や神話・伝説が題材となっている。
知覧の水車カラクリは、舞台を見せる「からくり劇場型」水車カラクリといえよう。
→詳しい解説は「水車からくり・六月灯(ろくがつどう)」
「知覧の水車カラクリ」2001年以降記録映像・記録画像
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総集編「薩摩の水からくり」 - YouTube薩摩半島民俗文化博物館チャンネル
〔実地調査〕
1993年以降の毎年7月9日。制作過程は、2002年7月に調査したもの。
〔参考文献〕
拙著「祭礼の中の水車からくり―南薩摩における研究視座の提示」(『鹿児島民具19号』,2007年鹿児島民具学会編・発行に所収)
拙著「万之瀬川流域の農村水車カラクリ人形芝居」(民俗文化財調査事業報告書『薩摩の水からくり』、1997年知覧町教育委員会発行に所収)