津貫豊祭太鼓踊り

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「津貫豊祭太鼓踊り」基礎データ

鹿児島の秋祭りは豊祭ホゼ)と呼ばれます。ホゼには伝統的な太鼓踊りが奉納されます。津貫の豊祭踊りは小太鼓2人,鐘2人,そして大太鼓16人で演じられます。小太鼓と鐘は女装した神秘的な男の子です。

「津貫豊祭太鼓踊り」写真と解説

1.津貫豊祭太鼓踊りの概要

津貫中間豊祭太鼓踊り津貫豊祭太鼓踊りは、毎年10月27日に加世田津貫の天御中主神社の豊祭で奉納され、各集落を回る。踊りは、津貫中間豊祭太鼓踊り干河区豊祭太鼓踊り上門太鼓踊りの三つがあり、同じ日に奉納される。上門・干河では、大浦から伝わったという伝承がある。

  

踊り子の構成は3地区とも同じで、中打ちと呼ばれる鉦2人・小太鼓2人、平打ちと呼ばれる大太鼓20名ほどと、歌い手3名からなっている。中打ちは4人とも花笠を被り、鮮やかな朱色の振袖姿。鉦は左手に鉦・右手に橦木を持つ。小太鼓は肩から胸の下に垂直に吊るした太鼓を、両手に持った桴で両側から叩く。平太鼓は、白鉢巻きに白装束。山鳥の羽で作った矢旗を背負う。太鼓は両肩から腹の前に垂直に吊り下げ、両手で両側かた打つ。

隊形は、中打ち4人が内円、平太鼓が外円となり、二重の円陣を組む。歌い手は中打ちと平太鼓の間に並ぶ。歌詞には、「せんぎの町」「ひんよ島原」「末どん」「鎌倉」などがあり、太鼓の音はほとんど聞こえず、鉦の音が響く。

大太鼓の桴は中間ではベー、干河・上門ではブッと呼ばれ、藺草製(中間は現在、藁製)。中間『復活五〇年記念誌』〔23頁〕に図示された作成法をまとめると、次のようになる。①長さ35センチほどの藺草の束の真ん中をくくり、②その下部に芯の釘束を詰めて藺束を膨らませてそれに紐を巻きつけて締める。③上部を折り曲げ(ここで二重になる)、④わさをかけて上部から絞り、⑤畳のヨマで手元を三か所縛る。実測したものの長さは、干河が16センチ、上門が15センチ、中間が17センチ。直径は太いところで3.5センチほど。干河では付近に生えている藺草で作り、最近は八代に行って買ってくるという。2、3年使い、痛んだら作り直す。上門では大浦の海水と淡水が交わる辺りに生えている、切る口が三角形の藺草を使っている。刈ってきた藺を一週間陰干ししたあと作る。

太鼓を響かせるというよりも、太鼓を付けた踊り子が、優雅に踊りを見せているという感じになる。太鼓は楽器というよりも、採り物といってよい。

2.津貫豊祭太鼓踊りの楽と歌詞

津貫豊祭太鼓踊りの演目は、奉納始めの「道切り(ミッキ)」、午前中の「前ニワ」、午後の「後ニワ」の3種類からなる。ミッキには歌詞はない。

(1)津貫中間豊祭太鼓踊り

【演目】

道切り 前ニワ 後ニワ
  1. 道切り(ミッキ)
  1. トビダシ(トッダシ) - 飛び出し
  2. カゴ
  3. カラストビ - 烏飛び
  4. センギノマチ - せんぎの町・朝結うた髪
  5. シンパン(グワンガラガン)
  6. マゴノショウ(マゴンショ)
  7. シマバラ(キンノトイノマネ) - 島原
  8. ヒキニワ(ヒッガ) - 引き庭
  1. トビダシ(トッダシ)
  2. カゴ
  3. カラストビ
  4. ジンクズシ - 陣崩し
  5. ヤッサ
  6. コバシリ - 小走り
  7. カマクラ - 鎌倉
  8. ヒザツキ(ヒザツッ) - 膝突き
  9. ヒキニワ(ヒッガ)

【歌詞】

道切り 前ニワ 後ニワ

(楽のみ、歌詞なし)

●センギノマチ

せんぎの町を通りて見れば
後から女郎が呼び戻す
17、8、9は、にたやのあられ
こうべをとけて目を覚ます
かみぎく様は伊達者でござる
朝結うた髪をぱらりととけて
これを結うてたもれ姉女さま

●マゴノショウ

ここはどこじゃとまごのしょ
問えばここは信濃の浅間岳よ
ねへゝねへゝの煙がさんさえつ
舞える様子はよいことじゃ

●シマバラ

ひんよ島原聞いて極楽
見て名所
ひんよ花の高瀬のあんやをとらせ

●ジンクズシ

げんぜどんのこそ登いやる
夕べのおぜんにあたらりて
馬よいくららよいくつはよい
ご陣くずしとお立ちやる

●コバシリ

すえどんのおもてのけいを見やれば
ころまき槍が五百本大和の
ごしょくは限りなし

●カマクラ

かまくらの御所のめらちに十三の
小女郎が酌を取る(ハアヨイ、ソーラヨイ)
酒よりも肴よりも十三の
小女郎が目についた(ハアヨイ、ソーラヨイ)
目につかばつれてめぐりあう
そらをそのべの末までも(ハアヨイ、ソーラヨイ)
それとても苦れしゅはござらん
別れが二度とあるものか(ハアヨイ、ソーラヨイ)

※演目・歌詞は、『復活50周年中間豊祭太鼓踊記念誌』から引用した〔29頁・42頁〕。

(2)干河区豊祭太鼓踊り

干河区豊祭太鼓踊り(ミッキの場面)【演目】

道切り 前ニワ 後ニワ
  1. 道切り(ミッキ)
  1. ツッカケ
  2. カゴ
  3. カワバタヤナギ
  4. カンカン
  5. セセノデ
  6. スイアシ
  7. ケイ
  8. ヒッゴ
  1. タナバタドン
  2. キッネガエシ
  3. ズイケン
  4. ニワツクイ コノヨイヨイ
  5. ブッマワシ
  6. カマクラ
  7. ヒッナラ
  8. ヒッゴ

※『加世田市史・下巻』〔337頁〕から引用。

(3)上門太鼓踊り

【演目】

道切り 前ニワ 後ニワ
  1. 道切り(ミッキ)
  1. カゴウックン
  2. カワバタヤナギ(二列縦隊)
  3. ナカマ
  4. サンキロ
  5. トンケン
  6. カマクラ(円陣隊形)
  7. ヤッサ
  8. 引庭(ひっが。元の隊形に戻る)
  1. ツッカケ
  2. ヅンタカタンタカ
  3. カラストビ
  4. シバウチカマクラ(途中一転して仕切る)
  5. ニワマワリ(途中二転して仕切る)
  6. トオヨイ
  7. 引庭(ひっが。元の隊形に戻る)

【歌詞】

上門太鼓踊り●サンキロ

ここは町々めもちの町よ
一夜泊でたたら踏む
たたら踏むなら一人じゃ踏まぬ
宿の娘とならたたら踏む

●トンケン

のべき秋の花すすき しおれそるる
露も知らずに 乱れ見られとさ
さあ雪がたつ もしもごいごいと
枕にどちち 枕にあらず
君のぞく 夜もすがらえ

●カマクラ

鎌倉の御所のめもちよ 十三小女郎が酌を取る
酒よりも肴よりも 十三小女郎が目についた
目につかばつれておじゃれよ 野辺の末までも
それとても苦しゅはござらん
別れがにえにえと ほとあるものか
別れがにえにえと ほとあるものか

※演目・歌詞は、『加世田市史・下巻』から引用した〔337-339頁〕。

→加世田の太鼓踊りの比較・検討は、「加世田の太鼓踊り」参照。

→参考「薩摩半島における太鼓踊りの桴(バチ)」。

「津貫豊祭太鼓踊り」記録映像・記録画像

津貫豊祭太鼓踊り
津貫豊祭太鼓踊り

2001年
YoutubeWMP

津貫中間豊祭太鼓踊り
中間豊祭太鼓踊り

2011・2012年
webアルバム

干河太鼓踊り
干河太鼓踊り

2011・2012年
webアルバム

上門太鼓踊り
上門太鼓踊り

2011・2012年
webアルバム


〔実地調査〕
1993年以降の10.27。映像は2001年の中間と干河のもの。
〔参考文献〕
復活50周年記念事業実行委員会編 1995年 『復活50周年中間豊祭太鼓踊記念誌』 津貫中間豊祭太鼓踊保存会
編さん委員会編 1986 『加世田市史・下巻』 鹿児島県加世田市

鹿児島祭りの森